Parrot Protocol の清算完全ガイド

この記事では Parrot の強制清算の仕組みを解説します。強制清算が発生したときに、みなさんの資産のうち、何がどれだけ残るのかを説明します。いくつかのシナリオを想定して、それぞれのケースでどのような結果になるかを簡単にみていきます。

最初に、ステーブルコイン USDC を担保にして PAI を借り入れるシンプルな例を見てみましょう。

たとえば、101 USDCを担保にした場合、借り入れ可能な PAI の最大数量は 100 となります。USDC-PAI ペアで借り入れるためには、担保率を101%以上に保つ必要があります。

ステーブルコインを担保にした場合には、年 0.1% の利子が発生するため、時間の経過とともにごくわずかに担保率が変化しますが、ステーブルコイン担保では強制清算が実行されることはありません。

それに対して、SOL や SRM および各種 LP トークン（将来的にサポートされる予定）など、ドル建て価格が変動する資産を担保にした場合は、資産の価格が下落するにつれて担保率も下がっていきます。担保率が清算担保率を下回ったとき、強制清算が発生します。これは、担保の価値が貸し出し資産の価値を下回ってしまう危険があるために行われる措置です。もし、担保の価値が貸し出し資産の価値を下回ると、プロトコルは担保不足に陥り、人々は貸し出した資産（PAI や pBTC など）が完全な価値で償還できないことを認識して、価格のペッグが外れてしまいます。

この例では、SOL を担保にして PAI を借り入れています。上の図では、預け入れる SOL の数量を 1 と入力し、150% の最低担保率を維持しつつ、可能な限り多くの PAI （この場合には 15.813 PAI）を借り入れようとしています。

19.76 ドルと表示されている清算価格（Liquidation price）にも注意が必要です。SOL がこの価格まで下がってしまうと、担保率が清算担保率である 125% を下回り、清算が実行されます。つまり、リクイデーターと呼ばれる清算プログラムにより、借入債務の返済が行われます。

担保資産の市場価格が清算価格に近づいてきたら、

1. 追加の SOL を担保として差し入れる
2. PAI を一部（または全部）返済する

のいずれかの方法で、150% 以上の担保率を維持してください。

注意：担保率が一定のバッファ範囲内、すなわち SOL の清算担保率（125%）と借り入れの際に表示される最低担保率（150%）の範囲に収まっている間は、清算は発生しません。

それでは、もし清算が発生した場合に、私たちの資産に何が起きるのかをみていきましょう。 先の例を使って説明したいと思います：

• 1SOL を担保としてデポジット
• 15.813 PAI を借り入れ
• 現在の SOL の価格は $23.76

もしも価格が清算価格である $19.76 を下回ったら、リクイデーターが作動して

• リクイデーターが私たちの PAI 借入債務である 15.813 PAI を返済します
• リクイデーターに 0.80025 SOL (つまり 15.813 / 19.76) が譲渡されます
• リクイデーターは 0.040 SOL（0.8 SOL の 5%）を清算報酬として受け取ります
• 私たちの保管庫には約 0.16 SOL が残ります（1 SOL からリクイデーターに転送された分を引いた数量）
• 私たちのウォレット（または流動性プールなど）にある 15.813 PAI は、いまや私たちが所有しています

もし、私たちが即座にその PAI で SOL を買い戻せば、元々の SOL の数量をほぼ取り戻すことができます。その場合、清算による損失は 0.04 SOL、およそ $0.7905 です。

計算の詳細

手元に残る SOL = 当初の SOL — (借入額 / 清算価格) * 1.05

私たちの例では:

手元に残る SOL = 1.0 — (15.813 / 19.76) * 1.05 = 0.1597 (SOL)

したがって、

清算後の全資産価値 [USD] = 手元に残った SOL（のドル建て価値） + 所有する PAI
= $3.1556 + $15.813
= $18.96

最終的に残る資産価値は 1 SOL には一致しませんが、それは 5% の清算報酬（私たちにとっては清算ペナルティー）がリクイデーターに支払われたためです。

清算は実際にはどのような仕組みになっているか

清算においては、リクイデーターが私たちの借入債務を肩代わりして返済し、その代わりに同額の SOL および 5% の清算手数料を受け取ります。これにより、Parrot プロトコルが不良債権をたくさん抱える不健全な財務状態に陥ることを防いでいます。

清算プロセスが終わった時点で、私たちの資産にはどのような変化があるでしょうか？

• リクイデーターが借入債務を返済しているので、私たちの PAI 債務はなくなっています。つまり、ウォレットにある PAI は私たちが所有しています。
• Parrot の保管庫に預けてある担保の数量は減少します。なぜなら、リクイデーターが私たちの PAI 債務を返済する代わりに、私たちの担保の一部が譲渡されることになるからです。

一見すると、担保の SOL の数量が少なくなることで、直感的には資産価値が大きく減少したように感じるかもしれませんが、以前は借り入れただけだった PAI を現在は所有しており、その PAI の価値は、概ね、減少した SOL の価値に相当することに留意してください。

言い換えると、清算によって私たちの資産価値が大きく減ることはなく、資産価値が減少したとすればそれはもっぱら担保資産の価格が下落したことによるものだということです。

まとめると、強制的に清算が実行された場合に起きることは、以下の通りです:

1. 担保資産は売却（リクイデーターに所有権が移転）され、担保資産の数量が減ります。
2. 借入債務は（全部または一部が）返済されます。
3. 担保資産の数量が減少した分は PAI という形で残ります。
4. 清算ペナルティーとして借入額の 5% がリクイデーターに支給されます。