Lifinity トークノミクス パート 1: 流動性マイニングとプロトコル所有流動性
これは LIFINITY Protocol の Lifinity Tokenomics Series Part 1: Liquidity Mining and Protocol-Owned Liquidity という記事を日本語訳したものです。
要約
- 私たちはトークノミクスを 6 つの記事に分けて発表していきます
- 流動性マイニングは一般にあまり効果的な戦略ではないので、Lifinity では採用しません
- Lifinity は自らのトークンだけでなく、Lifinity が扱うすべてのトークンペアの流動性を所有することを目指します
- 私たちの収益はすべて直接的または間接的にトークンホルダーに分配されます
目次
· イントロダクション
· 流動性マイニングの危険性
· プロトコル所有流動性の拡張
イントロダクション
これから数週間にわたって、Lifinity のガバナンストークンである LFNTY のトークノミクスを詳しく解説した一連の記事を公開していく予定です。そして、その最後に、私たちの IDO とロードマップに関する詳細もアナウンスしたいと思います。
トークノミクスの設計に着手したとき、私たちは次のような目標を設定しました:
・広範なホルダー層を醸成するため、長期にわたる幅広い配布を実現
・プロトコルに永続的な価値を生み出す形で LFNTY を供給
・保有期間に応じた報酬でホルダーのインセンティブを適切に調整
Olympus と Curve は私たちが特に注目したメカニズムを持つ二つのプロトコルですが、それらは万能ではありません。Olympus 方式のプロトコル所有流動性 (protocol-owned liquidity; POL) は、プロトコルが自らのトークンの流動性を永続的に所有することを可能にしますが、そのトークンが価値をもたらす方法は提供しません。Curve 方式のトークンロックと投票の仕組みはトークンが価値をもたらす方法を提供する一方で、分散型取引所 (DEX) が外部の流動性供給者 (LP) に依存する点を解決しません。
私たちは、Curve と Olympus の原理を組み合わせることで、それぞれの長所を活かした斬新な仕組みを考案したと確信しています。
一連の記事では、次のようなトピックに触れる予定です:
- パート 1: 流動性マイニングとプロトコル所有流動性 ← (本記事です)
- パート 2: トークンのロック — トークンをロックすることでどのようにしてホルダーに適切なインセンティブと報酬を与えるか
- パート 3: 投票と賄賂 —報酬の排出に投票する仕組みを通じて賄賂による新たな収入源を作り出す
- パート 4: 収益 —LP の手数料配分を動的に決める方法とマーケットメイキング利益および収益の用途について
- パート 5: 全体のまとめ —他のプロトコルとの比較を通じて、Lifinity がそれらの要素をどのように組み合わせるかを説明
- パート 6: veIDO — トークン割り当て、veIDO の仕組み、調達資金の用途およびロードマップ
まず最初に、なぜ私たちが、他のほぼすべての DEX がやっているのと同じことをしないのかを説明しましょう。
流動性マイニングの危険性
自動マーケットメイカー (AMM) は、AMM 上での取引を促進するための資産を提供する流動性供給者 (LP) を必要とします。AMM と LP という概念に馴染みのない方は、こちらの記事(英語)を読んで基本的な理解を深めると良いでしょう。
DEX では、プラットフォーム上で流動性を供給する報酬としてトークンを提供することが一般的で、これは流動性マイニング (liquidity mining; LM) と呼ばれています。通常、取引手数料はユーザが流動性を供給するモチベーションとしては不十分であり、変動損失 (impermanent loss; IL) のリスクがさらに状況を悪化させます。その対応策として、DEX はプロトコルのトークンを支給して高い利回りを提示します。
これにより、DEX は素早く流動性を確保することができますが、同時に DEX のトークンは常にインフレに悩まされることになります。傭兵のようなイールドファーマーがトークンをファームし、機会があれば即座に売却するので、プロジェクトを信じている長期的なホルダーがデメリットを被ります。これでは、短期的なイールドファーマーよりも長期的なホルダーに手厚く報いるという理想形とは、逆の状況になってしまいます。
今説明したダイナミクスに加えて、Lifinity には、他にも、LM が最適な選択肢となりえない二つの特徴があります。まず第一に、集中流動性により、Lifinity は競争力のある価格を提示するためにそれほど多くの流動性を必要としません。第二に、Lifinity は IL を大幅に減少させ、場合によっては利益すら生み出すので、取引手数料とマーケットメイキングの利益(安く買って高く売る)で十分な利回りを得ることができます。そのため、LM 報酬を支給して大量の流動性を集めなくてもよいのです。
さらに、後ほどパート 6 の記事で説明するとおり、私たちは IDO で調達した資金を使って LFNTY の初期流動性を提供するので、LM を通じて外部の流動性供給者にインセンティブを与えて LFNTY の価値を希薄化してしまうこともありません。
結局のところ、流動性が一時的に貸与されるだけで、報酬の終了に伴いユーザが流動性を別の場所に移動してしまう LM はあまりよい戦略ではないと私たちは考えています。こうした理由から、私たちはいかなる形の LM も導入する予定はありません。
その代わりに、DEX が自ら流動性を所有することで、ユーザからの資金提供に依存しない状況を目標としています。
プロトコル所有流動性の拡張
Olympus および類似のプロトコルは、他のプロトコルがネイティブトークンの流動性(通常は USDC とペアになっている)を徐々に蓄積することを可能にします。それらのプロトコルは、彼らのトークンを含む LP トークンと引き換えに、彼らのトークンのボンドを割引価格で売却することで、それを実現します。たとえば、Invictus は IN-USDC という LP トークンと引き換えに、割引された IN ボンドを販売しています。ユーザが LP トークンと引き換えにボンドを購入すると、ボンドは時間経過と共に徐々にアンロックされていきます。
POL の概念に初めて触れる方は、Socean のこちらの記事(英語)を読んで深く理解することをお勧めします。また、Olympus のボンドの仕組みについて説明するこちらのクリップも参考になるでしょう(オリジナルの長時間のビデオはこちらです)。
Lifinity は、自らのトークンに関連する流動性 (LFNTY-USDC LP) のみならず、Lifinity がプールを提供しているすべてのトークンペアの流動性を所有することを目指しています。これは、私たちの DEX の機能を他の DEX と差別化する鍵であるとともに、POL の進化の次のステップになると考えています。
私たちがどうやってこれを実現するかを説明する前に、まず veLFNTY の基本を解説しなければなりません(これは次のパート 2 の記事で詳しく取り上げます)。veLFNTY は基本的に、可変の期間にわたってロックされた LFNTY です。ここでの説明においては、ボンド化された LFTNY もしくは時間と共に徐々にアンロックされる LFNTY と考えても結構です。
Lifinity は、プロトコルが流動性を提供しているトークンペアの LP トークン(たとえば SOL-USDC LP トークン)と引き換えに、割引された LFNTY を veLFNTY という形で販売することで、流動性を獲得/所有します。言い換えると、LFNTY は市場価格よりも安く購入できますが、購入時点で即座にロックされて veLFNTY に変換されます。その対価として、Lifinity は LP トークンを獲得することになります。
このメカニズムを通じて、ユーザはプロトコルとそれが生み出す利益に対する所有権の割合を増やし(詳細はパート 4 で説明します)、プロトコルは収益を生むために稼働させる資産を入手することができます(もちろん、 ユーザは他の DEX と同様に LP トークンを保有し続けても構いません)。
この画像に示されている上下二つのトークン交換の重要な違いは、上の交換が可逆であるのに対して、下の交換は一方通行になっている点です。すなわち、ユーザはプールに原資産をデポジットする代わりに LP トークンを受け取るだけでなく、その逆に LP トークンと引き換えに原資産を引き出すこともできます。一方、veLFNTY に関しては、ユーザは LP トークンと引き換えに veLFNTY を受け取ることはできますが、逆に veLFNTY と引き換えに LP トークンを引き出すことはできません。このようにして、一度 Lifinity が流動性を獲得したら、その流動性は永続的なものとなり、誰もその POL を引き出すことはできないのです。
このデザインの優れた点は、ユーザは veLFNTY と引き換えに資産を手放す必要がありますが、その資産は継続的に収益を生み出し、それが veLFNTY ホルダーに分配されるため(詳しくはパート 4 の記事で説明します)、ユーザが手放した資産は、その後もユーザのために働き続けるということです。
言い換えれば、Lifinity が永続的に獲得する流動性は、すべての veLFNTY ホルダーに利益をもたらします。したがって、一般的な LM において、新たに流通するトークンは、それを売却する一部の人にのみメリットをもたらし、他の人にとっては単なる売り圧力となりますが、私たちが新規に流通させる LFNTY トークンは、既存のすべての veLFNTY ホルダーが恩恵を受けます。
通常、DEX は LP にインセンティブを与えるために、すべてではないにしても取引手数料の大部分を放棄しなければなりません。しかし、プロトコルが流動性を所有していれば、その必要はないのです。つまり、取引手数料のごく一部をプロトコルフィーとして受け取るのではなく、プロトコルはその流動性から得られるすべての取引手数料を自分のものにすることができます。その結果、プロトコルの収益性は格段に向上します。
さらに、すべての収益は veLFNTY ホルダーに分配されるか、あるいは LFNTY の買い戻しに使われ、それはさらに流動性を獲得するために用いられる(そしてそれがさらなる収入を生み出す)ため、私たちの DEX で発生する収益は究極的には veLFNTY ホルダーの利益となります。
最後に、流動性を所有することで、Lifinity を容易に複製することができなくなります。プログラムコードは誰でもコピーできますが、流動性はそうはいきません。
このように POL を拡張することで、Lifinity は自立し、LP に頼ることなく、自らの資産で継続的に収益を得られるようになります。
しかし、私たちは LFNTY にさらなる価値を与えることができると信じており、その方法については今後の記事で掘り下げていきたいと思います。
この時点で、記事を読んでいる方は多くの疑問を持っているでしょうし、それは至極当然のことだと思います! 一つの記事にトークノミクスの詳細をすべて詰め込むことはできませんでした。みなさんの疑問には、新しい記事が公開される度にお答えしていくことができるはずですが、そうでなければ私たちの Discord でも喜んで回答いたします。
私たちのトークノミクスはホルダーにとって非常に有利なものであり、Solana のプロジェクトによく見られる、ダンプされるだけのトークノミクスに陥るパターンを回避していると考えています。私たちは、コミュニティがこのトークノミクスをしっかり理解していることを確認しながら、新しい記事を公開するたびにフィードバックに耳を傾けたいと思います。
それでは、veLFNTY に関する次回パート 2 の記事をお待ちください!