Lifinity トークノミクス パート 2: トークンのロック

Softgate Limited
10 min readMar 1, 2022

--

これは LIFINITY ProtocolLifinity Tokenomics Series Part 2: Token Locking という記事を日本語訳したものです。

パート 1 では、私たちが流動性マイニングを避ける理由に触れ、代わりに流動性を所有することを目指すとお話ししました。本記事では、LFNTY をロックする仕組みによって、どのようにしてホルダーに適切なインセンティブを与えるのかを説明していきます。

要約

  • トークンロックにより、ホルダーの時間的な投資ホライズンが明確になり、プロトコルはそれに応じた報酬をホルダーに提供できます
  • ユーザは LFNTY をロックすることで、時間経過と共に数量が減衰しながらアンロックされていく veLFNTY を受け取ります
  • 4 年ロックされた veLFNTY は xLFNTY としてトークン化できます
  • 未実装の機能を追加する形で Tribeca の上に構築する予定です

目次

なぜトークンをロックするのか?

プロトコルが共通して直面する問題は、長期的なトークン保有者と短期的な投機家を区別できないことです。トークンはウォレット内の単なる数字であり、保有者の意図を伝えるものではありません。理想的には、プロトコルは、ユーザがどれだけ長い期間そのトークンを保有することを約束しているかに応じて報酬を与えるべきです。さらに、ユーザがトークンを売却しないことを約束する期間が長ければ長いほど、プロトコルの将来的な方向性に関してより多くの発言権を持つべきでしょう。これにより、長期保有者はプロトコルに長期的な利益をもたらす行動を取るようにインセンティブが一致し、プロトコルも彼らのコミットメントに報いることができます。

Curve は、これを巧みに実現する方法を開発しました。ユーザはトークンを任意の期間だけロックし、その預かり証として別のトークンを受け取ります。ロック期間が長ければ長いほど、より多くのトークンを受け取るのです。こうして、長期保有者は自分の意思を示し、プロトコルはそれに応じた適切な報酬を与えることが可能になります。

Lifinity も同様のモデルを採用する予定ですが、いくつかの重要な違いもあります。ここでは、読者が Curve のトークンロックのことを知らない前提で、仕組みを詳しく説明していきます。

veLFNTY の仕組み

ユーザは所有する LFNTY トークンをロックして、代わりに vote-escrowed LFNTY — 略して veLFNTY — を受け取ることができます。LFNTY をロックする際には、最短で 7 日間、最長で 4 年間のロック期間を選択します。ユーザが受け取る veLFNTY の量は、LFNTY をロックする期間の長さに比例し、具体的には、以下のようにして計算します:

veLFNTY の数量 = (ロックする LFNTY の数量) * (ロック期間 [日]) / 1460

veLFNTY は特別な種類のトークンで、LFNTY をラップするような存在と考えてもよいでしょう。veLFNTY はロック状態 (locked) とアンロック状態 (unlocking) という二つのステートを持ちます。最初に veLFNTY を受け取った時点では、ロック状態になっています。ロック状態の間、veLFNTY にロックされている LFNTY には一切アクセスできません。

ユーザはいつでも veLFNTY をアンロック状態に移行させるトランザクションを実行することができます。アンロック状態になると、veLFNTY の残高は時間の経過と共にリニアに減少していき、ロックされていた LFNTY も同様に時間経過に応じてリニアにアンロックされていきます。

たとえば、100 LFNTY を 4 年間ロックして、100 veLFNTY を受け取り、アンロック状態にします。ロック期間の半分に相当する 2 年後には、100/2=50 veLFNTY が残っており、100/2=50 LFNTY がアンロックされています。3 年後には 25 の veLFNTY が残っていて、75 の LFNTY がアンロックされます。そして 4 年後には、veLFNTY の残高は 0 になり、LFNTY のロックはすべて解除されることになります。

同じ数量の LFNTY を 2 年 または 4 年ロックしたケース

veLFNTY は、ロックが完全に解除されるまで、ロックの残り時間より長い期間であれば、再ロックも可能です。たとえば、ロックが解除されるまで 2 年の veLFNTY は、再ロックして 4 年間のロックにすることができます。これにより、veLFNTY の保有量が増加します。具体的な数量は、LFNTY がどれだけ残っているか(つまり引き出されていない LFNTY の数量)に基づいて、前述の計算式によって算出されます。

ユーザは、一つのウォレットにつき、一つの veLFNTY アカウントしか持つことができません。つまり、既に veLFNTY を持っているアカウントに veLFNTY を追加する場合、片方のロック期間がもう一方よりも短ければ、長い方のロック期間に合わせて再ロックされます。再ロックを避けたいユーザは、別のウォレットを使用して下さい。

ここまで、veLFNTY の仕組みの詳細を説明してきましたが、なぜ私たちがこのような特性を選択したのか、そしてそれがどのようにインセンティブを適切に調整することにつながるのかをみてみましょう。

インセンティブの調整

ロック期間が長いほど多くの veLFNTY を受け取れる理由はいたって単純で、ロック期間が長い人の方が、プロトコルの長期的な成功に対して強い関わりを持つからです。したがって、彼らはより多くの報酬をプロトコルから受け取り、より多くの投票権を持つべきです。

veLFNTY は譲渡ができませんが、この性質は数量の減衰を可能にするために必要です。私たちがよく知っている Solana の主要なトークン規格である SPL トークンは、静的なバランスを想定して設計されています。したがって、数量の減衰を実現するには、別のプリミティブが必要になるのです。

そして、veLFNTY の減衰する性質には、残存ロック期間と、ユーザが持つ報酬のシェアや投票権の量との間に相関関係を持たせる意味もあります。もしもそれらがロック期間が終了するまで一定であるとしたら、たとえばロック期間があと一日しかないユーザが悪意のある行動を取るかもしれません。また、これにより、プロトコルに長期的な利害関係を持つ人々が、プロトコルの方向性や支給される報酬に対して大きな発言力を持つことが保証されます。たとえば、4 年間ロックしたばかりのユーザは、2 年前に 4 年間ロックした人よりも、長い将来にわたってプロトコルに関与することになるため、プロトコルに対してより多くの発言権を持つべきです。これは数量の減衰がなければ成立しません。

最後にリニアアンロックに関して補足しておきましょう。私たちのモデルは、この点において、ロック期間の最後にすべてのトークンのロックが解除されるという標準的な仕組みとは異なります。私たちのモデルでは、ve トークンの残高が徐々に減少していくにもかかわらず、ロックした人が自分のトークンに最後まで一切アクセスできないという過酷なアンロック方法を避けることにしました。veLFNTY の残高が減少したら、その減少分に相当する LFNTY はアンロックされるべきだと私たちは考えています。なぜなら、ユーザはその LFNTY に対応する veLFNTY を現在は保有していないからです。これにより、ロックすることがより魅力的になり、プロトコルが所有する流動性 (POL) を増加させるための鍵となります。ロック条件が厳しい場合(たとえばプロトコル報酬がなくリニアアンロックもないようなロックを想像してください)、ユーザはより大きな割引率を要求するので、販売される veLFNTY に対して、より少ない POL しか獲得できないでしょう。

重要なことは、私たちのデザインは、短期間に繰り返しロックしようとする人々に対する防御にもなっている点です。このような人たちには、再びロックするかどうかを頻繁に見直すことができる利点がある一方で、長期間ロックしている人に比べて報酬や投票権が少なくなるというデメリットがあります。たとえば、100 LFNTY を 4 年間ロックしたユーザは、4 年間のロック解除期間中に、時間的な加重平均で 50 veLFNTY を保有することになります。それとは対照的に、100 LFNTY を 1 年ずつ 4 回ロックしたユーザは、時間加重平均で 12.5 veLFNTY しか得ることができません。

4 年ロック veLFNTY のトークン化

私たちは、また、4 年ロックされた veLFNTY をトークン化したバージョンである xLFNTY というトークンを用意する計画です。4 年ロックされた veLFNTY と xLFNTY は 1 対 1 のレートで自由に交換できるようになります。veLFNTY と異なり、xLFNTY は標準的な特性 — ウォレットに表示され、譲渡や取引が可能 — をすべて備えた SPL トークンです。私たちは Serum 上に xLFNTY-USDC プールを作成しますが、このペアに流動性を提供する予定はありません。

veLFNTY をトークン化する理由をいくつか挙げておきましょう:

  • ユーザが自分の veLFNTY を別のウォレットに転送できる
  • veLFNTY のポジションを手仕舞いたい人が、LFNTY の売り圧力を作らずに(おそらく割引価格にはなるものの)ポジションを解消できる
  • 将来 veLFNTY に新たなユーティリティーが生まれる可能性がある
  • 私たちがやらなかったとしても、Curve と Convex の関係のように、他の誰かがこれをやり、そしてその過程でユーザから手数料を徴収することが想定される

LFNTY をロックして非流動的にすることがポイントだったのに、なぜ再び veLFNTY を流動化するのか疑問に思う方もいるでしょう。それを理解する上で大切なのは、仮に veLFNTY が流動的になったとしても、その背後にある LFNTY は依然としてロックされたままで売却することはできないという点にあります。そのため、xLFNTY が売却されても、xLFNTY の所有者が変わるだけで、他の veLFNTY ホルダーには何の不利益も発生しません。

実装

私たちは、Solana の主要プロトコルのメンバーによって開発/保守されているオープンソースのガバナンスプリミティブである Tribeca を用いて実装を行います。Tribeca は、プロトコルが自らのトークンの ve バージョンを作成し、それを投票に使用します。私たちは、まだ Tribeca に実装されていないロック状態とリニアアンロックの機能を追加する予定です。

次の記事では、veLFNTY に与えられた投票権を利用して、ホルダーにどのような付加価値を生み出すことができるかを解説します。

--

--