Lifinity トークノミクス パート 5: 全体のまとめ
これは LIFINITY Protocol の Lifinity Tokenomics Series Part 5: Putting it All Together という記事を日本語訳したものです。
パート 4 では、Lifinity が動的に手数料を調節し、veLFNTY ホルダーのために収入をどのように使うかを解説しました。本記事では、これまで説明してきた Lifinity の構成要素がどのように組み合わせられるのか、他のプロトコルとの比較を通じて、その全体像を見ていきたいと思います。
目次
- Lifinity トークノミクスの要約
- veLFNTY ホルダーのガバナンス参加
- Lifinity のモデルと Olympus の違いは?
- Lifinity のモデルと Curve の違いは?
- Lifinity と他の Solana 上の DEX の違いは?
- 最終段階
- まとめ
Lifinity トークノミクスの要約
- ユーザが LFNTY をロックすると、減衰してリニアにアンロックされていく veLFNTY を得ることができます
- Lifinity は LP トークンと引き換えに veLFNTY を販売することで、恒久的に流動性を所有します
- veLFNTY ホルダーは、LP トークンと引き換えに販売する veLFNTY をどのようにプールに割り当てるかに関する投票に参加します
- プロトコルは賄賂を支払い、自分たちのプールに排出が割り当てられるよう、veLFNTY ホルダーに投票を促します
- 収益は veLFNTY ホルダーに分配されるほか、LFNTY の買い戻しに使われます
veLFNTY ホルダーのガバナンス参加
多くの DeFi DAO は完全な分散化を目標にしていますが、実際にはこれには多数の障害が伴います。DAO のガバナンスへの参加率が低いとか、トークンのホルダーが情報に基づいて意思決定をするための時間や専門知識を持っていないなどの理由から、少数の参加者によって意思決定されることも少なくありません。単刀直入に言えば、ほとんどの人はインセンティブがある場合にしか興味を示さないのです。
最終的には、私たちも完全な分散化を目指したいと考えています。しかし、最初からこれを行うことは現実的でも実現可能でもないので、徐々にプロセスを進めていくことになるでしょう。そのため、初めのうちは、Lifinity チームが veLFNTY ホルダーの投票にかけるべきものとそうでないものを決定します。このポリシーの狙いは、私たちが行動のすべてを投票にかける必要がないため機敏に動けるようになること、そしてそれと同時に、veLFNTY ホルダーが直接影響を受ける可能性があるケースや、ホルダーの意見がとても貴重である場合には、その意見に耳を傾けられることです。
最も重要なのは、veLFNTY ホルダーが LFNTY の排出を割り当てるプールを決定する点にあり、(他のプロトコルがそのために賄賂を支払うので)これがおそらく Lifinity のガバナンスにおいて一番価値のある側面であるということです。これに関連して、私たちは veLFNTY ホルダーが LFNTY のトレジャリーをどのように利用するかの決定にも関与するべきだと考えています。主な使い途は、私たちの POL を拡大していくことですが、他にも生産的な用途が見つかるかもしれません。
私たちがホルダーの意見を求めることを予定していないいくつかの例としては、追加する新しいプールの種類や、取引手数料/集中度/リバランス係数などのパラメータ調整です。私たちの開発者はオンチェーンマーケットデータを熟知しており、DEX のパラメータを最適化するために多くの時間を費やしてきました。ですから、セキュリティを担保しつつ、POL の獲得を推進し、プロトコルの収益を最大化を実現するためにこれらの決定を下すのは、彼らが一番の適任者であると考えています。
しかしながら、私たちは常にユーザのフィードバックを尊重することは明確にしておきたいと思います。私たちがあることを投票にかけないからといって、その話題についてユーザが何を考えているかを気にしていないわけではありません。批判に応え、改善のためのユーザのアイディアを実行していくことが、私たちの成功の鍵を握っていると信じています。
Lifinity のモデルと Olympus の違いは?
Olympus と Lifinity は、Olympus が準備通貨の仕組みで、Lifinity はDEX であるという意味において本質的に異なりますが、どちらも流動性を獲得するメカニズムを持っており、そこにはいくつかの大きな違いがあります。
まず、トークンのボンドを販売する代わりに、私たちは veLFNTY を販売します。要するに、veLFNTY のトークンロック機能が、Olympus のボンディング機構に取って代わるわけです。この方法はボンディングに比べて大きな利点があり、ロック期間に応じた割引率を与えることを可能にします。ロック期間が長ければ長いほど、より大きな割引を受けることができ、それにより長期保有者に報いることができます。
二つ目の違いは、ロック期間に応じて割引額の上限を設定する方法です。標準的なプロトコル所有 (POL) モデルでは、買い手が見つかるまでずっとボンドの割引率が増加し続けます。これは、既存のホルダーの価値が希釈される度合いを無視して、なるべく早くボンドを売却することを優先するものです。実際、わずか七日間のロック期間で(APY ではなくて ROI で)60%もの高い割引率になることもあります!
私たちのアプローチは、この優先順位を反転させています。つまり、仮に POL の成長速度が遅くなるとしても、Lifinity が LP トークンと引き換えに veLFNTY を売却する際には、妥当な範囲で取引を行うようにします。なぜなら、一定の割引率を超えてくると、さらに多くの流動性を獲得しても割に合わなくなるからです。こうして、veLFNTY ホルダーの価値を不当に希釈することなく、LFNTY のトレジャリーを賢く活用できます。
この二つの仕組みは、LFNTY を安く買い、それをできるだけ早く売ってアービトラージで利益を得ようとする短期筋の買い手 — 既存の POL-as-a-service プロトコルでよく見られます — を抑制するためにとても重要です。
さらに、Olympus のモデルでは、ユーザはボンドトークンのロックが解除されるのを待ってから利用しなければいけませんが、Lifinity のモデルでは、ユーザは LP トークンを veLFNTY に交換した瞬間から、プロトコルの報酬にアクセスできるため、取引がより魅力的なものになります。
Lifinity のモデルと Curve の違いは?
Curve では、veCRV のホルダーが、より多くの CRV 排出量を受け取るプールに投票することができます。これは veCRV の投票権をマネタイズするものですが、提供する流動性の点ではプロトコルは自給自足ではなく、常に LP に依存していることになります。
同じ事は賄賂を支払うプロトコルにも言えます。プロトコルが CRV 排出量の賄賂を払う場合、そのプロトコルは自分のプールに流動性を提供するインセンティブを与えているわけですが、彼らは流動性をレンタルしているに過ぎず、永遠にこれを続ける必要があります。
流動性が LM 報酬に依存していると、ネイティブトークンの価値が高いときは流動性が増加し(APY が増加するため)、低いときには流動性が減少します(APY が減少するため)。しかし、流動性が LP に依存していない場合には、この反射性の性質がなくなり、結果的に流動性と収益の両方が安定します。Lifinity が提供する利回りは、独自のトークンを報酬として排出するのではなく、純粋な取引活動に基づく有機的なものです。したがって、私たちの APY は持続可能で、LFNTY ホルダーの価値を希薄化するような戦略に頼る必要はありません。
LFNTY の排出を、流動性提供への報酬としてではなく、veLFNTY の販売に利用することで、Lifinity は自ら提供する流動性のすべてを所有することを目指す長期的なアプローチを採用しています。これは、流動性が永続的なものになる点で、Lifinity にとっても賄賂を支払うプロトコルにとっても良いことです。また、収益の大部分を LP に支払う必要がないため(代わりに veLFNTY ホルダーに還元されます)、Lifinity の収益性が向上します。
標準的な LM を実施しないことの帰結として、Curve のように LP 報酬をブーストすることはありません!このことは、ユーザが最大のブーストを得るために veLFNTY をアグリゲートする Convex のようなプロトコルが必要ないことを意味します。ユーザの投票権とプロトコル収益のシェアは、veLFNTY の総供給量に対する veLFNTY 保有量の割合にのみ依存します。
Lifinity と他の Solana 上の DEX の違いは?
Lifinity はコンスタントプロダクト AMM やステーブルスワップにおいて流動性を提供するシンプルさ(ポジション調整が不要で一度セットしたら後は忘れても良い)を維持しつつ、Uniswap v3 方式のプロトコルのような集中流動性を可能にしています。さらに、オラクルを活用して安く買って高く売る賢いマーケットメイキングを行い、取引手数料以外の収益源を作り出しています。
Lifinity は、トークンの排出で流動性供給者にインセンティブを与えるのではなく、プールの総流動性が目標流動性に近づくにつれて、流動性供給者の手数料割合を徐々に減らしていくというアグレッシブなアプローチを取っています。これは、競争力のある価格を提示するために必要となる流動性の量が少ないことと、マーケットメイキングによる収益性が高いためです。また、流動性供給者への報酬は、純粋に LP トークンの価値の上昇という形で支払われるため、LM 報酬の半分を売却して複利運用する必要がなく、ユーザは取引手数料や自動複利運用プラットフォームの手数料を回避することができます。
最後に、流動性を所有することで、Lifinity を複製することができないような塀が設けられます。LM 報酬による膨大な APY に対抗することはできませんが、すべての LM プログラムはいずれは終了するので、取引活動が唯一の収益源となったとき、Lifinity がそれを獲得することになるでしょう。
最終段階
LM ベースのプロトコルにおいては、流動性を維持し、競争力を保つために継続的なインフレが発生します。Lifinity は最初のうち、主にトレジャリーの LFNTY を使って新たな流動性を確保していきますが、最終的には買い戻した LFNTY で十分な流動性を獲得できるだけの収益を上げることを目指しています。言い換えれば、プロトコルが POL を成長させ続けるためにトレジャリーからの排出を必要としなくなるのが目標です。理想的には、トレジャリーにあるすべての LFNTY を使い切らずにこの段階に到達し、残りはバーンするか、また別の生産的な用途に活用したいと考えています。
まとめ
投資家のメリット: 投資家は投票することで報酬が得られ、プロトコル収益から取り分を受け取り、プロトコルは収益を用いて継続的に LFNTY を買い戻します。
他のプロトコルのメリット:彼らのトークンの恒久的な流動性を獲得するために Lifinity が手助けをします。
Lifinity のメリット:LFNTY を幅広いユーザ層に徐々に配布していき、LFNTY はロックアップされ、さらに多くの流動性を所有することで自立します。
本シリーズの最後の記事では、私たちの IDO の詳細とロードマップを明らかにしたいと思います。ご期待ください!