Why we invested in Mercurial Finance 日本語訳
本記事は、Sino Global Capital 社の Why we invested in Mercurial Finance という記事を、Sino Global Capital 社の許諾を受けて、日本語訳したものです。翻訳を快く許諾してくださった Sino Global Capital 社に感謝いたします。
なお、本記事で提示するデータおよび考察は、翻訳時に混入した誤りを除き、更新/修正/改良の予定はありません。
本記事は投資助言を意図するものではありません。
イントロダクション
ステーブルコインはあらゆる分散型金融 (DeFi) エコシステムにとって必要不可欠な要素です。ステーブルコインの保有額が 2020 年 6 月時点の 70 億ドルから 2021 年 5 月時点では 650 億ドルにまで指数関数的に増加していることから、ステーブルコインが広く普及していることは明らかでしょう。ステーブルコインは個人投資家が投資を行う際の表示通貨としてもっとも直感的であり、また法定通貨との主流の交換媒体でもあります。中央集権型取引所では、ステーブルコインを他のトークンとペアにして取引するのが一般的です。加えて、多くの投資家が、ステーブルコインファームが提供するベータニュートラルで高い利回りに魅力を感じて DeFi に引き込まれています。こうした要因により、ステーブルコインは DeFi に欠かせない存在という地位を確立しています。
USDT/USDC 取引ペアの DEX における月次取引量は過去一年間で何倍にも増加しており、2020 年 6 月の 3 億ドルから 2021 年 5 月には 80 億ドルと驚異的な伸びを記録しました。
さらに、2020 年 1 月以降、USDC と DAI の日々のトランザクション数は 8 倍になっています。明らかにステーブルコインは DeFi のありとあらゆる分野で広く使われています。
現在の問題点
ステーブルコインにおける長年の問題は、利用可能なステーブルコインの種類が多いことです(たとえば USDT / USDC / DAI など)。プロトコルは無数の異なるユースケースのためにこれらのステーブルコインを利用し、ときには独自のステーブルコインを発行することさえあります(Liquity の LUSD や Alchemix の alUSD など)。この分断化により、トレーダーはそれぞれのユースケースに応じた適切な種類のステーブルコインに交換することを余儀なくされます。現在、Solana でステーブルコインを交換する方法は、主に二つあります:
- 様々な DEX UI を通じて、Serum のオーダーブック (CLOB) に注文を出す
- 様々な DEX UI を通じて、Serum の AMM でスワップする
しかし、トレーダーは CLOB のオンチェーン流動性の少なさや、AMM で発生する高いスリッページという問題に直面します。
同様に、ステーブルコインのパワーユーザーのもう一つのグループである貸し手は、保有するステーブルコインから幾分かの利回りを得たいと考えています。貸し手も Solana 上で二つの選択肢を持っています:
- ステーブルコインを金融市場に供給して利回りを得る(まだ実現していません)
- 様々な DEX UI を通じて、Serum の AMM にステーブルコインのペアの流動性を供給し、スワップの手数料や(もしあれば)流動性マイニング報酬を得る
貸し手は最も高い貸出金利を求めて投資を最適化するため、彼らの供給はとても弾力的で、最も高い APR を提供するプラットフォームに配分されます。
具体的には、AMM においては、利回りはステーブルコインペアの取引量に比例します。前述の通り、トレーダーは最も流動性が高くてスリッページが少ない AMM で取引を行おうとするので、トレーダーは貸し手が提供する流動性を必要とし、貸し手は手数料を払ってくれるトレーダーを必要とするという意味で、両者の間には共生関係があります。
DeFi は継続的に成長しているので、貸し手は利回りを最大化するために、絶えず新しいイールドファームや戦略を模索する必要があります。このような戦略を効率的に実行するための時間と専門知識を持たない投資家にとっては、これは難しいことかもしれません。
Mercurial Finance
Mercurial Finance (https://www.mercurial.finance/) は、パーミッションレスかつスケーラブルで完全に分散化されたブロックチェーンである Solana 上に構築されています。Solana は業界最高水準の毎秒 65K のトランザクション/400ミリ秒のブロックタイム/極めて安価なトランザクション手数料を実現しており、Mercurial にとって最適なブロックチェーンといえるでしょう。それに加えて、Mercurial は Serum DEX とも緊密に統合され、そのオーダーブックの注文フローと流動性を活用することでスリッページを減らし、両システムのトランザクションを促進します。
Solana の DeFi エコシステムの急速な拡大に伴って、ステーブルコインの発行やスワップ、そしてファーミングの需要は高まる一方です。革新的な技術/ビジョン/ブランド/戦略的パートナーの強力な組み合わせにより、私たちは Mercurial Finance がこの需要の最大シェアを獲得できるユニークな立場にあると考えており、以下ではそれを深く掘り下げていきます。
ソリューション
Mercurial Finance は Solana エコシステム上のトレーダーと貸し手の双方に総合的なソリューションを提供することを目指し、ダイナミックプール※の概念を導入します。ダイナミックプールには二つの重要なイノベーションが組み込まれています。
※ 訳注:原文では dynamic vault と表記されており、直訳するとダイナミックな金庫や保管庫、カタカナではダイナミックヴォールトとなりますが、馴染みがなくて分かりにくいと思われたため、ここでは「ダイナミックプール」と意訳しました。
- 増幅された価格カーブ: 流動性を一定の価格帯に集中させます
- 動的な手数料: アルゴリズムがマーケットの取引量やボラティリティに応じて手数料を動的に調節します
- 高ボラティリティ時: 手数料を高く設定し、IL を減少させ、より多くの手数料収益を獲得します
- 低ボラティリティ時: 手数料を低く抑え、取引を促します
トレーダーにとっての利点
これらの革新的な技術は、流動性の利用率を向上させることで、前述の問題を効果的に解決すると同時に、ステーブルコインをスワップする際のスリッページが従来のスワップより 100 倍くらい改善されるというメリットをトレーダーに提供します。潤沢な流動性と低いスリッページに惹かれて、トレーダーがスワップのプラットフォームとして Mercurial を利用する可能性が高まれば、流動性供給者が得る手数料の増加にもつながります。
貸し手にとっての利点
一方で、これらのダイナミックプールは、投資された資本に対する利回りを最大化することで、貸し手の流動性を集めることができます。これは、特殊なオンチェーンアルゴリズムが、レンディングプラットフォーム/フラッシュローン/外部またはクロスチェーンのプールの中で、最も利回りの高いメカニズムに向けて流動性を自動的に供給することで達成されます。
ユーザが他のトークン(例えば SOL/SRM)をデポジットして、ダイナミックプールに預けられる mUSD などの合成資産を発行できるようにすれば、さらに流動性が強化されます。これらのユーザは、デポジットした資産へのエクスポージャを維持しつつ、さらに次のような二種類の利回りを得ることが可能になります:
- ダイナミックプールから得られる利回り
- ネイティブ(MERトークン)のステーキング報酬による利回り
資産をデポジットした後、貸し手は流動性供給者 (LP) トークンを受け取り、これはさらに投資効率を向上させるために活用できます:
- LP トークンをステーキングして MER の流動性マイニング
- 他の Mercurial プールへの再投資
- 他のレンディングプラットフォームにおける担保として利用
シームレスな UX/UI
Mercurial Finance は、中央集権型プラットフォームから分散型プラットフォームへの移行を促すためには、とても使いやすくてシームレスなインターフェースが重要であることを理解しています。そのため、Mercurial は、直感的なインターフェースと快適なユーザ体験の提供を非常に重視しており、チームは、UX/UI を洗練し、摩擦を最小限にするデザインパターンを開発すべく継続的に作業を進めています。
MER トークン
ネイティブな MER トークンは、トークン保有者に価値を生み出す仕組みをいくつも備えるように設計されています:
- スワップから得られる手数料
- プールで発生する利回りから徴収される手数料
- 合成されたステーブルコインの担保
さらに、MER トークンは Mercurial エコシステムのガバナンスと本質的にリンクしています。MER トークンの保有者は、スワップ手数料やプールの手数料、そしてイールド戦略といった鍵となる重要なパラメータの決定に対して投票することができます。
リスクと脅威
競合
Solana エコシステムでは現在いくつかのステーブルコインのスワッププロトコルが開発されています。借り手も貸し手も、最終的には、機能/利回り/手数料/スリッページなどを総合的に判断して、自分にとって最大のメリットを提供するプラットフォームを選択します。Mercurial Finance がユーザに優先的に利用されるプラットフォームとしての地位を確立するためには、すべての面で最高のソリューションを提供する必要があるでしょう。
将来的な可能性
他のプロトコルとの統合
Solana エコシステムでより多くの DeFi の構成要素が開発されるにつれ、他の DeFi アプリケーションが様々なユースケースで Mercurial のスマートなプールを活用するようになることが期待されます。例えば、レバレッジをかけたイールドファーミングプロトコルであれば、金利の安いステーブルコインを借りて、Mercurial の低スリッページのスワップを利用して、目的のステーブルコインと効率的に交換し、50:50 の比率を維持することができます。独自のステーブルコインを発行する Dapp ならば、発行するステーブルコインの互換性と流動性を最大化するために、Mercurial との統合が不可欠になるでしょう。
ステーブルコイン以外への応用
Mercurial は彼らのダイナミックプールを他のあらゆるトークンのペアを扱えるように拡張することを目指しています。新しい価格モデルを実装し、1:1 ではないトークンのセットに最適化します。これにより、Mercurial の提供するサービスが、さらに幅広いマーケットに及ぶようになります。
結論
ステーブルコインは、あらゆる分散型のエコシステムにおいて、普及と流動性を促進する基盤となります。私たちは、Mercurial Finance が、Solana のエコシステムの効率を高め、投資家やトレーダーにさらなる価値と機会をもたらす重要な構成要素であると信じており、今後も Mercurial チームおよびそのコミュニティのパトーナーとしてサポートをしていきたいと考えています。