Why we invested in Oxygen 日本語訳
本記事は、Sino Global Capital 社の Why we invested in Oxygen という記事を、Sino Global Capital 社の許諾を受けて、日本語訳したものです。翻訳を快く許諾してくださった Sino Global Capital 社に感謝いたします。
なお、本記事で提示するデータおよび考察は、翻訳時に混入した誤りを除き、更新/修正/改良の予定はありません。
本記事は投資助言を意図するものではありません。
Sino Global Capital は Oxygen へ投資していることをご報告します。この投資レポートでは、Solana と Serum のエコシステムに巨大な貸借のサービスとインフラをもたらす Oxygen の可能性と必要性について、私たちの考察をシェアしたいと思います。
Oxygen の主要なメリット:
- 高速なトランザクション処理が可能で低コストなオンチェーンのプライムブローカレッジ。
- 担保を共用することによる清算リスクの低減。
- ユーザが設定できる市場ベースの公正な貸借価格の形成。
- DEX のプール内における効率化されたレバレッジ取引。
- トークン/合成金融商品/ノンリニアな資産などを同じアカウント内の共通の証拠金でサポート。
- 現在の金融モデルを、よりアクセスしやすく公正なものにするための重要な最初のステップ。
イントロダクション
私たち Sino は、ブロックチェーンがインターネット以来の最大の技術革新であり、DeFi はその中でも極めて素晴らしいユースケースになる可能性があると考えています。しかし、DeFi が本当の意味で伝統的な金融 (TradFi) に取って代わるには、分散化というメリットと引き換えに品質を犠牲にすることを最小限に抑えなければいけません。最近まで、伝統的な金融機能を分散型チェーンに移植する際、主に、スピード/信頼性/大規模な注文執行/ユーザに提供される商品の複雑さなどの点において問題に直面していました。これらの問題は、Ethereum 固有の制限により必要に迫られて、Ethereum 上の巧妙なプロトコル設計によって対処されてきましたが、Solana と Serum のエコシステムの登場により、TradFi に代わる公平で利用しやすい新たなシステムを構築するためのインフラが整ったと考えています。
DeFi は成熟してきており、決済や貸借からデリバティブ/保険に至るまで、より複雑なサービスを個人に提供しています。DeFi の進化の次のステップは、一般的なユーザにもアクセス可能な状態を維持しつつ、より複雑なサービスを機関投資家やプロトコルの規模で提供することですが、これは TradFi では不可能なことです。TradFi の機能の中には、小口の投資家には提供されず、大規模なファンドのみが利用可能なものがあります。そうした機能の一つが、プライムブローカレッジです。
プライムブローカレッジとは何か?
これまでのプライムブローカレッジは、取引や投資の規模の面から通常の証券会社では提供できない、ヘッジファンドのような大規模な投資家にのみ提供される一連の専門的なサービスを指していました。サービスには以下のようなものが含まれます:
- 証券の貸し付け
- 資産の保管
- レバレッジをかけた取引の執行
- 現金の管理
- 仕組商品
- 合成商品(スワップなど)
- 市場へのダイレクトアクセス
プライムブローカレッジが果たす最も重要な役割は、こうしたすべてのサービスを一カ所に集め、あらゆる市場戦略の効率的な執行を最適化することです。
人そして人とのつながりを重視するこの業界においては、プライムブローカレッジは、例えば、資本の導入や投資家の紹介、リスク管理顧問、オフィスのリースなどのカスタマイズされたサービスをファンドに提供することもあります。
プライムブローカレッジの主な役割は、ファンドが投資戦略に集中するために、彼らの投資活動の多くをアウトソースできるようにすることです。彼らはファンドが戦略を実行するために必要なツールを提供するのです。
このようなホワイトグローブ(訳注:高級という意味)と呼ばれるカスタムサービスの中には、DeFi に適さないものもありますが、一部のブロックチェーンではスケーリング/速度/透明性の面で制約があるために、仮にそれが DeFi に適したサービスであっても移植することができませんでした。それが Solana + Serum によって一変します。ここで Oxygen の出番です。
Oxygen の概要
Oxygen は DeFi のプライムブローカレッジプロトコルで、これまでは大規模でグローバルな投資ファンドにのみ提供されていたプライムブローカレッジサービスの一部を、一般のユーザにも開放します。デジタル資産を保有している人は、Oxygen プロトコルを利用して、流動性の供給、利回りの獲得、借り入れた資産を空売り、資産ポートフォリオに基づくレバレッジ取引などが可能になります。Oyxgen は DeFi アプリケーション、個人ユーザおよび機関投資家のニーズに応えるサービス提供を目指しています。
Oxygen はまずプールベースのインフラにおける貸借のサービスから提供を始めました。
ユーザには、ポートフォリオをより活用して、幅広い戦略を可能にする新機能が提供されますが、それと同時に、たとえば単純な利回り戦略などを新規ユーザがすぐに導入することもできます。
前述したとおり、ユーザは自分でプールを作成して、資産の預け入れを行うことができます。プールを用いることで、自分のポートフォリオを利用して貸借を行うことが可能になり、以下のような機能が実現されます:
クロス証拠金
- あるポートフォリオを別のポートフォリオを担保にして借りることができます。これによりマージンコールのリスクを軽減し、ポートフォリオの安定性が高まります。
- ポートフォリオのすべての資産を担保にできるため、借入時の清算リスクが低くなります。
利息収入
- 市場レートや指値注文の価格に応じて、自分で設定した条件(満期/利回り)でプールから直接貸し出すことができます。
- 貸し出された資産は借り手のプールで保証されているため、ユーザはさらに大きな借り入れ余力を維持して、資本効率を高めることができます。
同一担保を共用
- ユーザは自分のポートフォリオで利回りを得ながら、そのポートフォリオを担保として他のアセットを借りることができます。
市場ベースの価格形成
- 貸借の清算価格は Serum のオンチェーンのオーダーブック上でマッチングされて決まるので、常に公正な価格が保証されます。従来の貸し出しプロトコルと異なり、ユーザは貸し出す際の最低レートを設定することもできます。
貸借サービスはほんの始まりに過ぎません。目標は、従来の投資銀行のビジネスをオンチェーンに乗せて、誰でも利用できるようにすることです。プライムブローカレッジプロトコルの提供に続いて、Oxygen はボラティリティー取引や仕組商品の組成手段などの他の製品も立ち上げを検討しています。これにより、ユーザが自ら仕組商品を作成して、すべてオンチェーンで提供することができます。
Oxygen の機能により、ユーザはポートフォリオを管理しながら、より多くの戦略を実行することができ、結果として利回りが最大化されます。これには以下のような選択肢が含まれます:
- レバレッジ取引 — レバレッジの提供はもはや中央集権的な取引所だけのものではありません。ユーザは分散型の Serum DEX でより大きな取引ポジションを持つことができます。
- 利息収入 — 自分のウォレットに保管してある資金で利息収入を得ることができます。
- 借り入れによる空売り — 分散化された資産の空売りが可能です。
- オプション売り — カスタマイズされた商品、たとえば独自のオプションを販売することができます。
私たちは、DeFi が成熟を続け、TradFi と同じくらい複雑になってくると、Solana + Serum の超高速なトランザクション処理と、まず第一に低コストであることを利用して、将来的に Oxygen が競争上の優位性を持つことになると考えています。複雑さが増しても、ユーザは Ethereum などの他のチェーンで見られるような指数関数的に増加する手数料を恐れる必要はありません。
Oxygen のミニマルな UI/UX とネイティブアプリも注目に値します。これらは新しいユーザにアピールするセキュアで合理的な体験を提供するでしょう。Oxygen は DeFi の中でも急速に普及する可能性を持つ数少ないプロジェクトの一つと言えますし、それは MAPS.me と組み合わせたときに特に顕著です。
なぜ Solana なのか?
多くのプロジェクトがなぜ Solana を選択しているのかを知るには、私たちの Solana 投資レポート(日本語訳はこちらの記事)を一読することをお勧めします。
エコシステム
Oxygen が Serum のエコシステムを活用することで、プロジェクトは Oxygen プロトコルの機能を統合もしくは拡張して、DeFi のコンポーザビリティの恩恵を受けることができます。
- MAPS.me は Oxygen 上で構築された最初の主要アプリケーションの一つで、1 億 4 千万人以上のユーザがネイティブ MAPS ウォレット内の資産から利息収入を得ることが可能になります。この機能が旅行アプリのユーザ層に好評であれば、Oxygen は Serum エコシステムに主流のリテールの流動性をもたらします。この統合が成功すれば、大規模なユーザ層を持つ多くの Web 2.0 企業が同様の統合を行うことになるでしょう。
- Serum は Oxygen を含む Solana 上に構築されている様々なアプリケーションの中で、借り手と貸し手の流動性を効率的に結びつける役割を担う分散型のオーダーブックマッチングエンジンです。
プロトコルフロー
1. 入金:ユーザは新しいプールを作成し、プロトコルに資産を預けます。たとえば wBTC を預けるとしましょう。Oxygen プロトコルは同じ数量の OXY_wBTC をプールに発行します。
2. 貸し出し:ユーザは貸し出しを有効にすることで、最低利回りを設定した上で自分の資産を貸し出すことができます。プロトコルは、OXY_wBTC を売却して 1.0005 の wBTC_FUTURE を購入する注文を Serum に発注し、ユーザに IOU_wBTC を発行します。
3. 資産の返却:24時間後、1.0005 wBTC_FUTURE が 1.0005 OXY_BTC (元本+0.05% の利息)に変わります。
4. 借り入れ:ユーザはある決まったレートで一日資産を借り入れる取引を開始します。借り入れリクエストが貸し手とマッチすれば、借り手は 1 OXY_BTC を、貸し手は 1.05 OXY_DEBT_BTC を受け取ります。
5. 資産の返却:借り手は 1.05 OXY_BTC を貸し手に返済し、貸し手は自分が持っている 1.05 OXY_DEBT_BTC をバーンします。
OXY トークンの概要
トークン保有者がプロトコルの収入を 100% コントロールします。
- Oxygen は貸借市場でマッチングするたびに手数料を徴収します。
- 手数料は清算レートの 7.5 から 15% の範囲で設定されます。
- トークン保有者は取引と清算時に追加の手数料を課すように決定するかもしれません。
ガバナンストークン
- トークン 1 つが 1 つの投票権を持ちます。
- 拘束力のあるガバナンス提案に投票できます。
- トークン保有者は、将来的に、プール内の取引や清算時、資産管理機能を利用したときに手数料を徴収するように投票するかもしれません。
- トークン保有者はトークン保有者の割引率を決定することもできます。
プロトコル割引
OXY トークンの保有者は最大で 50% までプロトコル手数料の割引を受けます。
リスクと脅威
流動性の欠如
現在の市場(24 時間制)の短期的な構造により、流動性を維持するには、DeFi で成功したように「一度セットしたら放置」というわけにはいかず、継続的な関与が必要なため、それが流動性の維持を妨げる要因になっています。Oxygen は高水準のリテール製品を構築し、Maps.me と統合することで、何百万人ものユーザと機関投資家の両方(その多くは Oxygen の支援者です)から流動性を集めることができる素晴らしいポジションを占めるでしょう。
既存のレンディングプールとの競合
Oxygen が提供するコアな基本機能の多くは、既存の融資プロトコルのロードマップで言及すらされていません。オプション/金利ヘッジ/仕組商品などの広い範囲のプロトコルにおいて、機関投資家向けの機能の真の競合相手が開発されています。Oxygen はプライムブローカレッジの主要な機能を一カ所で提供することで、超高速な執行と戦略の展開を可能にします。Oxygen の基盤となる機関投資家向けの機能と金融商品の原資産の粒度によって、革新的な抽象化レイヤーがさらなる柔軟性を持つことになるでしょう。
ユーザが管理できる条件
既存のプラットフォームでは、APY は需要と供給の流動性によって決まります。これは、一般的な変動金利で資金を預けたいリテールの参加者には十分ですが、特定の条件を設定したい参加者の実用には耐えません。Oxygen はユーザが自分のポジションをより詳細にコントロールすることを可能にします。ユーザが最低の貸出金利を設定した場合、市場金利がユーザの最低貸出金利以上であるときだけ貸出資金を投入することができます。この取引は IOU 契約の形でトークン化され、市場レートと期間がそのトークンの中に変更できない形で固定されます。これらのトークン化された債務契約は、仕組商品や、ヘッジ/債券/証券化といったリスク管理戦略の構成要素として利用することができます。
まとめ
Oxygen は、DeFi の機能を大幅に飛躍させ、B2B2c との戦略的な統合を通じて、DeFi を一般大衆に普及させることに寄与するでしょう。特定の要件に合わせて金融商品をカスタマイズする機能は、より大規模で洗練された投資家を取り込むのに役立ち、担保資産をも積極的に取引できるという選択肢は、資本効率を大きく向上させます。革新的な機能に加えて、Oxygen と Maps.me の 1 億 4 千万人以上のユーザとの統合は、リテール向けの DeFi 導入の大きな助けとなるでしょう。これらの利点により、Oxygen は新興の DeFi エコシステムにおける重要な構成要素に位置付けられます。