Why we invested in Parrot Protocol 日本語訳

Softgate Limited
18 min readSep 14, 2021

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本記事は、Sino Global Capital 社の Why we invested in Parrot Protocolという記事を、Sino Global Capital 社の許諾を受けて、日本語訳したものです。翻訳を快く許諾してくださった Sino Global Capital 社に感謝いたします。

なお、本記事で提示するデータおよび考察は、翻訳時に混入した誤りを除き、更新/修正/改良の予定はありません。

本記事は投資助言を意図するものではありません。

イントロダクション

私たちは、流動性供給者 (LP) トークンにロックされた資産価値にアクセスできるようにする一連の DeFi 製品を開発している Parrot Protocol への投資を発表できることを嬉しく思います。現在、何十億ドルものトークンが — 流動性プールやイールド獲得ストラテジなど — さまざまな DeFi アプリケーションの中にロックされています。多くの場合、これらの LP トークンは、本質的な価値を持っているにも関わらず、利用されないままになっています。この投資レポートでは、このようなロックされた価値を解放することが DeFi における効率性とコンポーザビリティの両方を高めるための基本要素であること、そして、なぜ Solana がこの革命を始めるのに最適なブロックチェーンであるかを説明します。

DeFi & LP トークン 入門

2021 年に大きな注目を集めた分散型ファイナンス (DeFi) は、ブロックチェーン上のスマートコントラクト(別の言い方では「プログラム可能な通貨」)を利用して、現実世界の中央集権的な金融の機能を分解することを目的として、仮想通貨シーンで爆発的に発展しました。

DeFi Llama によれば、DeFi には 1710 億ドル以上のロックされた合計資産額 (TVL) があり、仮想通貨界隈の主役としての地位を確固たるものにしています。過去一年間のこの急激な上昇は、主に次のようないくつかのイノベーションが要因と考えられるでしょう(ただし網羅的なリストではありません):

  1. DEX と 自動マーケットメイカー (AMM) (Uniswap / Sushiswap / Curve)
  2. パーミッションレスなレンディングマーケット (Aave / Maker / Liquity)
  3. オンチェーンのデリバティブ (Synthetix / dYdX / Opyn)
  4. イールドオプティマイザー (Yearn / Compound)
  5. リキッドステーキングプール (Lido)
ソース: DeFi Llama

これらの革新的な DeFi アプリケーションに共通しているのは、いずれも様々な理由によって、流動性をプラットフォームに固定しなければならないという点です —

  1. DEX / AMM : 取引を行うために流動性プールに
  2. マネーマーケット : 預託資産を担保として
  3. デリバティブ : 担保として
  4. イールドオプティマイザー : 預託資産を様々な戦略に投入
  5. ステーキングプール : ステークされた資産をバリデータにデリゲート

以下の二つのグラフは、これらのプラットフォームにロックされている膨大な資産価値を示しています:

  • 三つの主要なレンディングプロトコルが 400 億ドル以上をロック
  • 主要な Ethereum DEX が 260 億ドル以上をロック

Dapp は通常、預かった資産に対する請求権を表す流動性供給者 (LP) トークンを発行します。

ソース: Dune Analytics
ソース: The Block

現在の問題点

現在、LP トークンの利用方法は限られています。LP トークンは主に流動性マイニング (LM) の報酬を得るためにステーキングプールに預けられていますが、LM は限られた期間しか有効ではなく、そもそも LM が利用できない場合も少なくありません。DeFi プロトコルの成熟に伴って、トークン発行が供給の上限に達すると、LM が大幅に縮小される可能性もあります。

LP トークンは、本質的に原資産に対する請求権を表すものなので、担保として利用可能な効率的なツールとして注目を集めています。こうした LP トークンの価値を引き出すことは、DeFi エコシステム全体の資本効率を高めるために重要な要素であると言えます。

しかし、LP トークンにはリスクと複雑さが伴うので、他のプロトコルは担保として受け入れることに慎重にならざるをえません。

  1. セキュリティリスク — プロトコルは、LP トークンの基礎となるプロトコルおよび複数の原資産のスマートコントラクトやセキュリティリスクに晒されます。これらのプロトコルが悪用されると、LP トークンが無価値になる可能性があります。
  2. オラクル攻撃 — LP トークンの価格は、通常、オンチェーンのオラクルを介して取得されるので、オラクル攻撃の影響を受けやすくなります。たとえば、warp.finance のケースでは、Uniswap の TWAP データに関する理解が不足していたため、攻撃に対して脆弱になっていました。
  3. 複雑な清算 — LP トークンは清算プロセスのための追加のステップと複雑さをもたらします。雪崩式に清算が発生した場合、状況を悪化させる負のスパイラルが発生するかもしれません。

このような複数の段階からなるプロセスには不確実性がつきものです。LP トークンの清算において元のトークンが売却されるまでの間に、トークンの価格が大幅に下落している可能性もあります。その点を考慮すると、ネイティブブロックチェーンは、トークン価格が大きく乖離する前に清算を処理できるだけの十分な速度を備えていなければなりません。

Parrot Protocol

Parrot Protocol は、Solana DeFi エコシステム内の効率性と流動性を高めるための基礎を作り上げています。Parrot は、流動性とレンディングのネットワークを構築するための段階的なアプローチを取っており、まずは独自のステーブルコインである PAI を共通の単位通貨として使用します。PAI は、複数の担保にかかるエクスポージャーを一元化することでリスクを軽減する必要不可欠な要素です。

トークンのファンジブルな性質と、DeFi によって可能となるコンポーザビリティは、サポートされるアセットが Solana ネイティブである必要がないことを意味します。Ethereum のような他のブロックチェーンから安全にブリッジし、それを Parrot に預けることで、Solana の高性能なインフラによって実現されうる新たな可能性を享受することができます。ユーザのお気に入りのファームやプールが Ethereum 上にしか存在しないために、ユーザが必ずしも ETH/BTC やその他のアルトコインをブリッジしたくないケースがあることを、Parrot は想定しています。Parrot は、この問題を解決するため、LP トークンを受け入れることで、ユーザがネイティブトークンのブリッジによって発生する機会損失に直面しないようにしています。これにより、ユーザは、LP トークンに固定された価値を担保として資産を借りることで、元本の投資からさらなる価値を引き出すことができるのです。

ソリューション

以下の図は、ユーザが Parrot Protocol を利用する際の流れを示しています。

Step 1: ミント(借入) — Maker 2.0 のようなものを想像して下さい。Parrot では、トークン (SOL, ETH, BTC), 利息付きトークン (ibETH, aBTC), ステーキングトークン (stSOL, stETH) そして LP トークンを担保として、ステーブルコイン PAI を借り入れることができます。

これは本質的には、ユーザが PAI のみを借り入れることができるような、ノンカストディアルなマネーマーケットです。ユーザが、サポートされているトークンを Parrot にデポジットして PAI を借り入れるということは、すなわち、元々の資産/プール/ファームのエクスポージャーを維持したまま、トークンにロックされていた価値をアンロックすることに他なりません。

Step 2: 収益 — Parrot はさらに、ネイティブトークンをイールドファーミング戦略に投入することで、ユーザが担保から追加の利回りを得ることができるようにします。LP トークンも、ユーザが流動性マイニングから利益を得られるように、流動性マイニングプールにデポジットされます。

Step 3: 投資 — 流動化された PAI ステーブルコインを入手したら、ユーザはこれを様々なユースケースに活用できます:

  • ネイティブアセット (SOL, ETH, BTC) を追加で購入
  • PAI をステーブルコインプールやイールドファーミング戦略に投入して利回りを得る
  • ネイティブアセットの利回りを得ながらデルタニュートラル戦略を執行する
  • PAI をデリバティブプラットフォームの証拠金として利用してマーケットリスクをヘッジする

合成資産

DeFi はオープンソースで自由な競争が可能なため、複数のプロトコルが類似の問題に対する同種の製品を開発することも珍しくありません。自由な競争は、現行の企業や価値を破壊するような参加者による絶え間ないイノベーションを促進するので、新しいタイプの産業には有益なことが多いと言えます。この初期段階においては、プロトコルがニッチな機能やユースケースによって競合との差別化を図る余地が十分にあるため、複数の競合プロトコルが共存することになります。しかし一方で、その結果として、様々なプロトコル間で流動性が分断されてしまうという共通の問題が発生します。

たとえば、様々なステーキングサービス(Steaking, Marinade, Socean, Chorus One)では、ユーザが SOL をステーキングプールに預けることで、バリデータの報酬の一部を得ることができます。資金を預ける人は、ポジションを表すステーキングプールトークン(stSOL, mSOL, prtSOL など)を受け取ります。問題は、これらの異なるステーキングプールトークンに互換性がないことです。ステーキングのプロジェクトごとに異なる流動性プールが必要となり、流動性がさらに細分化され、結果的にスリッページやレートが悪くなる非効率的な市場となります。

Parrot はこの問題を解決するために、あらゆるステーキングプールトークンを pSOL の担保として預けられるようにしました。バリデータの報酬が発生すると、担保 (stSOL / mSOL) にそれが織り込まれて価値が上がり、清算のリスクがなくなります。仮にユーザが stSOL を担保に PAI を直接借り入れた場合、SOL の価格が下落すれば、清算のリスクに直面することになるでしょう。

今後 Parrot では、Solana のエコシステムの流動性と全体的な効率性を高めるために、同様の目的を持つ様々な合成資産をサポートする予定です。

Solana で構築する理由

Parrot Protocol は、Ethereum のような他の L1 で経験する苦痛を緩和するため、高性能ブロックチェーンである Solana をベースにサービスを構築することにしました。高速なトランザクション、低いレイテンシー、とても低いコストはいずれも Solana ブロックチェーンの使い勝手の良さに資する要素です。Ethereum の L1 での取引コストは法外に高く、100 ドル以下のトランザクションはほとんど実行できません。その点において、Solana には大きなチャンスがあります。Solana の高パフォーマンスなインフラとそのメリットに関しては、こちらの Solana 投資レポートをご覧下さい:

具体的には、Parrot Protocol の場合、Solana において複数の処理ステップを一つのトランザクションにまとめることができるというメリットがあります。これにより、必要に応じて LP トークンをより効率的に流動化することができるのです。さらに、Solana 上のオラクルは、1 秒間に何度も価格を更新し、価格の正確さに対する信頼性を提供できる点も重要です。

債務ポジションを一貫して正確に時価で評価し、評価額割れしそうなポジションがあれば迅速に清算できることは、Parrot Protocol の完全性を維持する上でとても重要です。こうした点において、Solana は LP トークンを担保として格納することに適したブロックチェーンといえます。

借り手の利点

Parrot はすべての負債を自ら発行したステーブルコイン PAI で表記して清算プロセスを遅らせることで、より大きなリスクに耐えられるという利点があります。清算期間が長ければ長いほど、ユーザは清算イベントを防ぐために債務ポジションに担保を追加する時間が増えます。これは、Parrot が PRT トークンを売ってより多くの PAI を発行することで不良債権のコストを内部化し、損失を補うことができるからです。しかし、ユーザの利便性と負債の蓄積の間には若干の境界線があります。

Parrot ステーキングプール

SOL トークンのステーキングは、Solana ネットワークのセキュリティを確保するために必要不可欠な要素です。ユーザには二つの選択肢があり、一つは特定のバリデータを選択すること、もう一つはリキッドステーキングプールを利用することです。Parrot のステーキングプールでは、ユーザが SOL トークンをプールに預け、Parrot がそのステークされた SOL を様々なバリデータに分散させます。このような分散を一人一人のユーザが自分で行うのは運用面で困難なことです。しかし、この分散化には、Solana ネットワーク全体のセキュリティ/分散性/検閲への抵抗力を高める上で非常に大きな意味を持つというメリットがあります。

ステーキングプールの主な欠点は、ユーザがステークした SOL を引き出すために、エポックの終了を待たなければいけない点にあります。Parrot は、prtSOL-SOL プールを提供することで、ユーザが prtSOL を SOL に即座に交換し、ステークした SOL をすぐに取り出せるようにして、ステーキングの体験を向上させています。

ロードマップ

将来的に Parrot は現在のインフラと PAI ステーブルコインの上に、以下のようなサービスを構築していく予定です:

  1. ノンカストディアルなマネーマーケットを拡大し、分離されたレンディングマーケットを提供します。これにより Parrot は、潜在的なリスクを隔離された環境に囲い込むことで、ロングテールな資産に対応することができます。同時に、ロングテールトークンの保有者は、潜在的な借り手がロングテールトークンを借りられるパーミッションレスなマーケットを提供できるようになります。将来的には、Parrot は、実際の借り入れ需要があるオフチェーンの貸し手(マイクロファイナンスやペイデイローンなど)に貸出余力を委ねることで、ロックされた DeFi の価値の利用可能性を広げることができます。これは斬新なコンセプトで、従来の借り手が資本にアクセスする方法を間違いなく増強するでしょう。
  2. バーチャル AMM (vAMM) による無期限の取引商品。PAI をプロトコルが管理する価値 (PCV) として利用し、無期限先物の価格が現物価格から乖離した場合、Parrot はこれを利用して無期限先物の裁定取引を行うことができます。vAMM の利点は、ネイティブにロックされた流動性を必要としないため、Parrot が他の商品の流動性を奪うことがないというところです。ユーザは自分が借り入れた PAI を担保として、任意のトークンの無期限なエクスポージャーを取ることができます。

PRT トークン

ネイティブ PRT トークンが生み出す価値が、プロトコルの長期的な持続には不可欠です。

プロトコルは、プロトコルが提供する様々なサービスから有機的な収益を得ることができます:

  1. 貸し出された PAI ステーブルコインのスタビリティフィー
  2. PAI の貸出金利
  3. 清算ペナルティ
  4. レンディングマーケットの利息の一部
  5. 無期限先物の取引手数料(vAMM は流動性プールを必要としないため手数料収入はすべて Parrot が徴収できます)

こうして蓄積された収益はすべて、オープンマーケットから PRT を購入するために使用されます。このプロトコルでは、PRT をバーンする代わりに、購入した PRT をネットワーク参加者への報酬として与えます。これは、Parrot の流動性マイニングプログラムの持続性を担保し、プロトコルを継続的に使用することを促します。

さらに PRT トークンの一部はインセンティブ付きの保険プール内でシステムの支払い能力を確保するためにも使用されます。これによって、レンディングマーケットでの資金の不足を補うことができます。

また、ガバナンスへの参加とコミュニティの長期的な連携を促すため、ユーザは PRT をステークしてガバナンストークンである gPRT を得ることもできます。ステーキング期間が長ければ長いほど、与えられる議決権と報酬のインセンティブが大きくなります。

リスクと脅威

  1. 競合: Solana の EVM 互換性に向けた開発により、Parrot は Ethereum ネイティブの既存ソリューションと競合します。彼らは試行錯誤を重ねて多くのユーザに人気のあるプロトコルを Solana で展開するかもしれません。また、これらのプロトコルは、Solana を効果的に活用して、これまで Ethereum では実現できなかった機能を公開することもあるでしょう。LP トークンを担保として受け入れることもその一つです。さらに、Solana ネイティブの他のプロトコルにも、競合する LP 担保機能を提供するものがあります。
  2. ステーブルコインのペッグ: Parrot は、ステーブルコインがペッグから外れる可能性があるという、ステーブルコインを発行するプロトコルが抱える共通の問題に悩まされるかもしれません。これは劇的な結果をもたらす可能性があります:
  • PAI の価値が大幅に上昇した場合、(PAI での)すべての借入金の価値が上昇し、すべての債務ポジションの担保率が実質的に低下します。
  • PAI の価値が大幅に下落した場合、Parrot が保有するプロトコル管理資産の価値が大きく低下する可能性があります。

一方で、Parrot は、PAI の貸出金利や流動性マイニング、APY のインセンティブを動的に調整してペッグの改善を促すなど、いくつかの自由に使える対策を持っています。

まとめ

Parrot Protocol は、彼らが計画したロードマップを成功させるための適切なビジョンと専門知識を持っており、DeFi 全体の効率性と互換性を最適化するための原動力になると私たちは信じています。彼らのマルチチェーンのアプローチは、現在 LP トークンの価値を引き出す術を持たない幅広い DeFi ユーザの支持を集めるという点でとても強力です。これにより、最終的には Solana のエコシステムにさらなる価値をもたらし、より多くの人々にパフォーマンスの高い ブロックチェーンの利点を知ってもらうことができるでしょう。

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