Lifinity トークノミクス パート 3: 投票と賄賂

Softgate Limited
9 min readMar 7, 2022

--

これは LIFINITY ProtocolLifinity Tokenomics Series Part 3: Voting and Bribing という記事を日本語訳したものです。

パート 2 では、トークンをロックできるようにすることで、どのようにインセンティブを適切に調整するかを解説しました。この記事では、LFNTY をロックする期間に応じて数量が決まる投票権によって、LFNTY にさらなる価値を追加する仕組みをご説明します。

要約

  • veLFNTY ホルダーがプロトコル所有流動性 (POL) 獲得のための報酬排出割り当てを決定するので、他のプロトコルは自分たちのプールに投票するように賄賂を払います
  • 他のプロトコルにとっては、自らのトークンに売り圧力を作り出し、POL-as-a-service を提供するプロトコル群よりも安価に永続的な流動性を確保できるので、投票を買収するインセンティブが働きます

目次

投票権のマネタイズ

あるプロトコルのトークンが流動性マイニング (LM) の報酬として支給される場合、利用可能なプールにどのように報酬を分配するかをプロトコルのチームが決定するのが一般的です。しかし、Curve Wars に注目していた人であれば、このような決定をチームに委ねるのは機会損失であることを知っているでしょう。むしろ、トークン保有者が LM 報酬の分配に関して投票できるようにすることで、とても大きな付加価値が生まれます。

その理由は賄賂です。自分たちのトークンを含むプールに LM 報酬を多く割り当てて欲しいプロトコルは、投票者にお金を払って、自分たちのプールに投票してもらうことで、ユーザが自分たちのプールに流動性を供給するよう間接的にインセンティブを与えます。これにより、トークン保有者は自分の投票権を効果的にマネタイズし、パッシブな収入源を増やすことができます。

(「賄賂」は一般には否定的な意味合いを持ちますが、この文脈においては肯定的に使われており、単に第三者がインセンティブを提供する行為やそのインセンティブを指します。仮想通貨の界隈では既に定着した用語になっているため、ここでもその用語を使用しています。)

私たちは流動性マイニングは行わないものの、LP トークンと引き換えにして販売される veLFNTY を、私たちのプロトコルが提供するプールにどのように配分するかを決定する必要があります。この決定は、veLFNTY ホルダーに委ねるのが最善の方法だと考えています。

その概要は、次の通りです:

  • Lifinity は流動性プールの排出量ゲージを実装します
  • veLFNTY ホルダーは排出量を割り当てたいプールに投票し、ゲージのウエイトを決定します(投票数に応じて比例配分)
  • プールのゲージウエイトが、そのプールに割り当てられる排出量の割合を決定します
  • 他のプロトコルは veLFNTY ホルダーに賄賂を払って自分たちのプールに投票を促します
投票と賄賂のメカニズム

私たちのモデルは、流動性を提供してトークンを稼ぐのではなく、LP トークンと引き換えに私たちのトークンを購入するようにユーザにインセンティブを与えるという点で、Curve のモデルとは異なっています。Curve / Convex のように、毎週投票者に何百万ドルもの賄賂を払って成功することを期待するのは妥当でしょうか? なぜプロトコルは veLFNTY ホルダーに自分のプールに投票するように賄賂を支払うのでしょう? それにはいくつかの理由があります。

なぜ賄賂を支払うか?

プロトコルが賄賂を払う第一の理由は、それが自分のトークンへの買い圧力を生み出す可能性があるからです。veLFNTY を購入するには、ユーザは他のプロトコルのトークンを含む LP トークンを引き換えとして差し出す必要があります。そのため、もしユーザがそれらのトークンを所有していないのであれば、veLFNTY を購入するために、まずそれらのトークンを購入しなければなりません。

(余談ですが、すべてのプールが veLFNTY を排出するので、どのプールから veLFNTY を購入するかは、純粋にどのプールの割引率が一番大きいかという問題に帰着します。つまり、veLFNTY と交換するためにユーザが購入すべきトークンが何であるかは、ユーザの観点からは関係がありません。そのため、その時点で割引率が最大のプールから veLFNTY の割り当てが購入されます。割引率は購入の度に減少していくので、各プールが順番に最大の割引率となって、最終的にはすべてのプールの割り当て分が買い取られることが期待できます。)

二つ目の理由は、Lifinity が LP トークンを獲得することで、プロトコルはトークンの恒久的な流動性を確保し、トークン流通量の一部がロックされるからです。さらに、Lifinity は流動性を集中させるため、プロトコルは一般的な AMM の流動性プールほどの規模の流動性を確保する必要もありません。

(さらに余談として、あるプロトコルが既にそのトークンの流動性を所有している場合は、Lifinity のプールにそのトークンを移すことで、集中による流動性の向上を図ることができます。Uniswap v3 類似のプロトコルのようにポジションを管理する必要はありません。)

三つ目の理由は、上記のようにして流動性を獲得すれば、Olympus などの POL-as-a-service を提供するプロトコルよりも安く済むことです。これは具体例を挙げて説明するのが分かりやすいでしょう。

ここでは、veLFNTY ホルダーが賄賂から得られる報酬を最大化するように集団的に投票すると仮定します。プロトコル A が X ドル、プロトコル B が Y ドルの賄賂を支払った場合、A のプールが受け取る排出量のシェアは X / (X+Y) となり、同様に B のプールの方は Y / (X+Y) となります。

仮に、翌週 100,000 ドル分の LFNTY が排出される予定で、プロトコル A と B が自らのプールへの割り当てを獲得するべく争っているとします。このとき、A が 20,000ドル分のトークンを賄賂として支払いました。B はどうするべきでしょうか? これは様々な要因に左右されますが、少なくとも賄賂の最大の金額を決めることは可能です。

B が 80,000 ドルの賄賂を支払った場合、彼らのプールには 100,000 ドル分の LFNTY のうちの 80,000 / (20,000+80,000) = 80%、つまり 80,000 ドル相当の LFNTY が割り当てられます。要するに、彼らは自らのトークンで支払った賄賂とちょうど同じ額の LFNTY の割り当てを受けるわけです。もしも彼らが 80,000 ドルより多く賄賂を払ったら、受け取れる LFNTY の額よりも多く賄賂を払うことになるため、これは明らかに望ましくありません! したがって、この例においては、B が支払うべき最大の賄賂の額は 80,000 ドルということになります。

この賄賂メカニズムの強力なところを見るために、B も 20,000 ドルしか賄賂を払わないケースも考えてみましょう。このとき、各プロトコルは 100,000 ドルの 20,000 / (20,000+20,000) = 50%、すなわち 50,000 ドルに相当する LFNTY の割り当てを受けることができます。

プロトコルが受けるメリットを正確に計算するには、50,000 ドル分の LFNTY が veLFNTY として売られる際の平均的な割引率を考慮する必要があります。仮にこの割引率が 20% だったとすれば、各プロトコルは 0.8 * 50,000 = 40,000 ドルに相当する流動性を確保することになります。

まとめると、プロトコルは 20,000 ドルを払っただけで、40,000 ドルの流動性を確保できたわけです。実質的に Lifinity は、他のプロトコルが自分たちのトークンの流動性を永続的に確保するための補助金を出していることになります。

それに対して、Olympus が考案した標準的な POL-as-a-service モデルでは、プロトコルは取得する流動性の価格を全額払う上に、POL-as-a-service プラットフォームに手数料も支払います。私たちは、Olympus のモデルを逆さまにして、手数料をなくし、プロトコルがトークンの流動性を獲得するための資本を提供します!流動性は彼らではなく私たちが所有することになるものの、それは私たちのプラットフォームにずっと残るので、結局のところ同じ目的が達成されます。

(最後の余談ですが、プロトコルが流動性を所有することに拘り、高い費用を払ってでも流動性を所有したいのであれば、POL-as-a-service を利用して、コスト効率を大幅に高めるため、他のコンスタントプロダクト AMM の LP トークンではなく、Lifinity の LP トークンと引き換えに自らのトークンのボンドを販売することもできます。)

最後にもう一つ、プロトコルが採用できる別の戦略として、veLFNTY を入手して自分のプールに自ら投票する方法もあります。この方法のメリットは、他の veLFNTY 投票者を継続的に買収するのではなく、veLFNTY を取得するために一度だけ初期費用を払い、その後はそれを自分のプールへの投票に使い続けることができる点です。

排出に関する注意

排出量の大部分のプール割り当ては、賄賂を受け取ることができる投票によって決定されますが、10% についてはチームが決めるものとします。なぜなら、BTC-USDC や ETH-USDC のような特定の流動性プールは賄賂を受け取る可能性がきわめて低いと予想されますが、取引量を稼ぎ出すプールとして、Lifinity の収益性、ひいては veLFNTY ホルダーの収益性の鍵を握っているからです。

次回は、Lifinity が生み出した収益をどのようにして veLFNTY ホルダーに支給し、POL を成長させていくのかを説明いたします。

--

--