Mercurial x Parrot Explained: PAI, Liquidations, and More! — 日本語訳

Softgate Limited
13 min readAug 5, 2021

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本記事は、Mercurial x Parrot Explained: PAI, Liquidations, and More! という記事を、著者の @tiddernips 氏の許諾を受けて、日本語訳したものです。翻訳を快く許諾してくださった @tiddernips 氏に感謝いたします。

なお、これまでの Mercurial 関連の記事では 、vault という単語を「プール」と意訳していますが、今回の記事の vault は Parrot の vault を意味しており、これまでの記事のように「プール」と総称するのはふさわしくないため、「保管庫」という訳語を当てることにしました。

これは Mercurial のコミュニティメンバーである @tiddernips 氏による PAI の解説記事です。なにか質問があれば、是非私たちの Discord に参加して、彼(およびそのほかのメンバー)とチャットしてください!

イントロダクション

現在、ステーブルコインはほとんどの DeFi プロトコルの基盤として機能しています。2020 年夏に DeFi が爆発的に普及してから、ステーブルコインの総供給量は指数関数的に増加しており、1,000 億ドルを超える規模に成長しています。また、ここ数ヶ月で、Solana 上に DeFi アプリケーションを構築しているプロトコルの数も加速度的に増加しています。

その中でも特に注目を集めているのが Mercurial Finance と Parrot Finance です。Mercurial Finance は、高度に集中したマルチトークンの流動性プールを構築することに重点を置いています。この流動性プールは、豊富な流動性をアウトソースしたい他の DeFi プロトコルの「プラグイン」機能になるとともに、Solana でステーブルコインをスワップする際に好んで利用されるサービスになるでしょう。Parrot Finance は、ユーザの資本効率を最大化することを目的とした過剰担保型のプロトコルです。PAI は Parrot プロトコルのネイティブなステーブルコインであり、Parrot の機能を実現する上で大変重要な役割を果たします。

DeFi には高いコンポーザビリティが不可欠であり、Mercurial と Parrot の最近の歩みは、そのための先進的な第一歩といえます。この記事では、PAI と pBTC や Parrot Finance の保管庫および清算処理、そして Mercurial と Parrot のコラボレーションについて説明をしたいと思います。

Parrot Finance とは

Parrot Finance は、発行する負債の裏付けとして暗号資産を利用する過剰担保型のプロトコルです。Parrot の過剰担保型のステーブルコインは PAI と呼ばれています。そのほかにも、Parrot はビットコインの合成資産 pBTC を提供します。プロトコルが過剰担保で裏付けられているため、pBTC はペッグを維持することができ、それがプロトコル全体のもう一つのセキュリティレイヤーとして機能します。プロトコルが発行した負債を返済するために十分な資本を持つことは重要であり、もしもそうでなければ、ユーザはそれまでに預けた資産を完全な価値で償還することができなくなってしまいます。

Parrot Finance のユーザは、様々な暗号資産(最終的には LP トークンも含む)を担保として Parrot の保管庫 (vault) に預けることができます。ユーザは、いずれかの保管庫に暗号資産を担保として預ければ、PAI を発行して借り入れることが可能になります。Parrot は過剰担保型で、ユーザは基本的に Parrot から借金をすることになるため、ユーザは借り入れる PAI や pBTC の価値よりも多くの担保を差し入れる必要があります。この安全策は、プロトコルの債務返済能力を維持するためのものです。

Parrot の保管庫

Parrot は様々な保管庫を提供していますが、基本的にユーザが入金する保管庫は、ボラタイル保管庫ステーブルコイン保管庫の二つに分類できます。ボラタイル保管庫は、ステーブルコイン保管庫と比べると、固有のリスクを伴いますが、現物資産を売却することなく、拘束されている資金を活用することが可能になります。他方、ステーブルコイン保管庫においては、強制清算が発生することはありません。将来的には、Parrot は多くの種類の担保資産をサポートする予定です。拘束されている多くの資産が活用できるようになることで、ユーザは最大限の資本効率を実現することができます。しかし、ボラティリティの高いボラタイル保管庫では、ユーザが強制清算されることがあります。ユーザが Parrot の保管庫に資産を預け、PAI や pBTC を借り入れるとき、清算価格 (liquidation price)、担保率 (collateral ratio)、借入金利 (borrow rate) という三つの値が表示されるはずです。これらはいずれも担保を預ける前に理解しておくことが重要なので、一つずつ解説していきたいと思います。保管庫によって金利が異なるため、担保を預ける前にそれを確認しておくことも大切です。

強制清算

まず第一に清算価格から見ていきましょう。これは、ユーザの保管庫において清算が発生する担保資産価格の推定値です。清算とは、プロトコルがユーザの負債を返済し、担保率を健全な状態に戻す処理のことを指します。清算が発生すると、(現在は 5% に設定されている)清算ペナルティの分だけ、ユーザの資産が減少します。ユーザの保管庫において、担保率が閾値を下回ると清算が発生します。ステーブルコインを担保とする PAI 保管庫(USDT, USDC, USDC+Earn)では清算は発生しませんが、USDC-pBTC 保管庫ではボラティリティが高まると清算が起きる可能性があります。清算が発生するのは、ユーザから預かっている担保資産の価値が低下して、ユーザの借入資産(PAI や pBTC)の価値に近づいた危険な状態になっているからです。もし、そのような危険な状態になったとすると、Parrot プロトコルは「担保不足」に陥ってしまい、ユーザは PAI/pBTC を完全な価値で償還できないことを認識して、PAI/pBTC は期待通りのペッグを維持することができません。

Parrot チームは清算の仕組みについて、とても詳しい解説を提供しています。例示のために、Parrot チームが用いた例を利用してここでも説明をしていきましょう:

ステーブルコイン保管庫の清算

最初に、ステーブルコイン USDC を担保にして PAI を借り入れるシンプルな例を見てみましょう。

たとえば、101 USDCを担保にした場合、借り入れ可能な PAI の最大数量は 100 となります。USDC-PAI ペアで借り入れるためには、担保率を101%以上に保つ必要があります。

ステーブルコインを担保にした場合には、年 0.1% の利子が発生するため、時間の経過とともにごくわずかに担保率が変化しますが、ステーブルコイン担保では強制清算が実行されることはありません

ボラタイル保管庫の清算

それに対して、SOL や SRM および各種 LP トークン(将来的にサポートされる予定)など、ドル建て価格が変動する資産を担保にした場合は、資産の価格が下落するにつれて担保率も下がっていきます。担保率が清算担保率を下回ったとき、強制清算が発生します。これは、担保の価値が貸し出し資産の価値を下回ってしまう危険があるために行われる措置です。もし、担保の価値が貸し出し資産の価値を下回ると、プロトコルは担保不足に陥り、人々は貸し出した資産(PAI や pBTC など)が完全な価値で償還できないことを認識して、価格のペッグが外れてしまいます。

この例では、SOL を担保にして PAI を借り入れています。下の図では、預け入れる SOL の数量を 1 と入力し、150% の最低担保率を維持しつつ、可能な限り多くの PAI (この場合には 22.8 PAI)を借り入れようとしています。

28.50 ドルと表示されている清算価格(Liquidation price)にも注意が必要です。SOL がこの価格まで下がってしまうと、担保率が清算担保率である 125% を下回り、清算が実行されます。つまり、リクイデーターと呼ばれる清算プログラムにより、借入債務の返済が行われます。

担保資産の市場価格が清算価格に近づいてきたら、

  1. 追加の SOL を担保として差し入れる
  2. PAI を一部(または全部)返済する

のいずれかの方法で、150% 以上の担保率を維持してください。

注意:担保率が一定のバッファ範囲内、すなわち SOL の清算担保率(125%)と借り入れの際に表示される最低担保率(150%)の範囲に収まっている間は、清算は発生しません。

それでは、もし清算が発生した場合に、私たちの資産に何が起きるのかをみていきましょう。 先の例を使って説明したいと思います:

  • 1SOL を担保としてデポジット
  • 22.8 PAI を借り入れ
  • 現在の SOL の価格は $34.90

もしも価格が清算価格である $28.50 を下回ったら、リクイデーターが作動して

  • リクイデーターが私たちの PAI 借入債務である 22.8 PAI を返済します
  • リクイデーターに 0.80 SOL (つまり 22.8 PAI / $28.50) が譲渡されます
  • リクイデーターは 0.040 SOL(0.8 SOL の 5%)を清算報酬として受け取ります
  • 私たちの保管庫には約 0.16 SOL が残ります(1 SOL からリクイデーターに転送された分を引いた数量)
  • 私たちのウォレット(または流動性プールなど)にある 22.8 PAI は、いまや私たちが所有しています

もし、私たちが即座にその PAI で SOL を買い戻せば、元々の SOL の数量をほぼ取り戻すことができます。その場合、清算による損失は 0.04 SOL、およそ $1.14 です。

訳注: 原文では $1.50 となっていますが、清算時の価格は 1 SOL = $28.50 なので、0.04 SOL は $1.14 です。

担保率と借入金利

担保率とは、ユーザが預けている担保資産の価値と借りている資産の価値の比率のことです。例えば、SOL が 30 ドルで取引されているとしましょう。あるユーザが 5 SOL を Parrot の SOL-PAI 保管庫に預け、50 PAI を借り入れたいとします。このとき、ユーザの担保率は 300% になります。ユーザが 50 PAI の借入債務を抱えたまま、SOL の価格が下がっていくと、担保率も低下していきます。SOL の価格が 25 ドルになったとき、ユーザの担保率は 250% となります。

保管庫で表示されている最後の指標は借入金利です。これは、ユーザが Parrot プロトコルに利息として支払う金額を年率換算して表したものです。SOL-PAI 保管庫の場合、現在は 0.2% の金利が設定されています。つまり、ユーザが SOL-PAI 保管庫で 100 PAI を借り入れて、それを一年間借り続けた場合、そのユーザの負債は 100.2 PAI に増加する(当初の負債よりも 0.02 PAI 多い)ということです。

Mercurial と Parrot のコラボレーション

Mercurial の製品がメインネットベータでリリースされると同時に、二つのチームは、Solana 上で初めて構築されたマルチトークンステーブルプールに関するコラボレーションを開始しました。マルチトークンステーブルプールのインフラはこれまで Solana 上で構築されたことがなかったので、これは記念すべきマイルストーンと言えるでしょう。Mercurial チームは、Solana 上の他のプロトコルには同種のものが存在しないような非常にユニークな製品を開発しています。Solana 上に構築されつつある DeFi の分野における、高度に集中したマルチトークンのステーブルプールの利用価値は、豊富な流動性を必要とする製品を開発中の新規/既存プロジェクトを急成長させるために役立ちます。

Mercurial と Parrot のコンポーザビリティは、お互いの成長を加速するために不可欠です。Parrot のネイティブステーブルコインである PAI は、そのポテンシャルをフルに発揮するために、Solana のエコシステム全体で豊富な流動性を必要とします。Mercurial は、高度に集中したマルチトークンのステーブルプールを構築することにフォーカスしており、それには多くの流動性供給者が必要です。Mercurial と Parrot の共生関係は、お互いのプロトコルを指数関数的に成長させることができます。

この新しいプールのローンチに当たり、Mercurial と Parrot は、流動性供給者に 1 トークンではなくて 2 トークンの報酬を与える共同流動性マイニングプログラムを用意しました。報酬は Mercurial の $MER トークンと、(まだ市場には出回っていない)Parrot の $PRT トークンの形で流動性供給者に分配されます。今回の共同流動性の取り組みは、Mercurial にとって初の試みでもあります。

急速に発展している若くて活気のあるエコシステムにおいて非常に重要なのは、質の高い製品を提供することです。実際のアプリケーションがなければ、すべて破綻してしまいます!ですから、コミュニティに関与して、建設的な批判に応える献身的なチームを持つことが、成功には不可欠な要素なのです。チームはコミュニティを必要とし、コミュニティはチームを必要とします。それらがお互いに協力し、プロトコルやエコシステム全体をより良くすることに継続して取り組むことで、繁栄を続けるマルチチェーンのエコシステムを作ることができるのです。

現在 $PRT トークンはリリースされておらず、報酬は遡及的に後ほど支給されます。ご自分の(将来受け取れるはずの)$PRT 報酬については https://parrot.fi/rewards でご確認ください。共同流動性マイニングプログラムの詳細については、こちらの記事をご覧ください。

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