Why we invested in Project Serum 日本語訳

Softgate Limited
31 min readJul 8, 2021

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本記事は、Sino Global Capital 社の Why we invested in Project Serum という記事を、Sino Global Capital 社の許諾を受けて、日本語訳したものです。翻訳を快く許諾してくださった Sino Global Capital 社に感謝いたします。

なお、本記事で提示するデータおよび考察は、翻訳時に混入した誤りを除き、更新/修正/改良の予定はありません。

本記事は投資助言を意図するものではありません。

ブロックチェーンの 10 億人規模のビジョン

Serum の投資レポートの趣旨を正しく伝えるためには、まず、ブロックチェーン技術に支えられた「大衆向け」の製品のビジョンがどのように進化してきたかという背景から説明する必要があるでしょう。

前回の 2017–2018 年の上昇サイクルでは、ブロックチェーンで様々なことが実現できると証明することに焦点が当てられていました。それは、必ずしもうまくいくわけでも、速いわけでも、大規模に適応できるわけでもなく、ただ単に「可能である」ことを示すだけでした。

2018–2019 年の中間期(およびそれ以前の時期)には、勤勉なチームがこのビジョンを拡大し、コンポーザビリティとスケーラビリティーの問題に取り組んだことで、異なる構成要素を組み合わせてより複雑なプロジェクトを構築できるようになりました。

2020 年には、Sam と Serum および Solana チームは、仮想通貨業界が進むべき方向性を示し、私たちにもっと大きな構想を持つよう促しました。彼らのビジョンは、非常にスケーラブルでパフォーマンスの高いブロックチェーン (Solana) と明確に差別化されたプリミティブを活用することで、とても多くのユーザに製品を提供するという「最終目標」を描いています。それは DeFi だけでなく、決済や SNS、メディアなどあらゆる分野の製品を含みます。私たちのビジョンは、もはや 100 万人のユーザをターゲットにするのではなく、10 億人のユーザと 10 兆円規模のオンチェーンの資産価値へと拡大されました。

DeFi の TVL は伝統的金融市場に比べると小さいが成長している。しかし Solana / Serum のビジョンは決済や SNS そして「大衆向け」のアプリケーションにまで及んでいる。

Project Serum の登場

10 億人のユーザをオンチェーンでサポートするためには、強力な「プリミティブ」や構成要素が必要です。これらのプリミティブには、安定した価値の保存手段(ステーブルコイン)、貸借プロトコル、オラクル、アセットプールなどが含まれます。分散型取引所もまた重要なプリミティブであり、これまで Ethereum や他の L1 では AMM 型のプロジェクトで実現してきました。

そこに、高パフォーマンスのブロックチェーンである Solana が開発されたことで、これまで存在しなかった設計空間が生まれました。毎秒のトランザクション数 (TPS) を 10 TPS から 50,000 以上に増やし、ブロックタイムを 400 ミリ秒に短縮することで、新しいタイプのインフラをオンチェーンに構築できるようになったのです。L1 にどの程度の規模の TPS が要求されるのかを考える上では、大規模なアプリケーションやサービスでは 10 万から 1,000 万 TPS が必要であることを知っておくとよいでしょう。 Solana によって、この溝を埋めることに一歩近づいたと言えます。

Serum は Solana によって実現が可能になった新しいタイプのインフラであり、1 兆円を超える複数の産業にとって重要なプリミティブとしての役割を果たします。Serum は、中央集権型取引所のエクスペリエンス、すなわち完全なオーダーブックと約定エンジン/高速な決済と取引/低い取引コストを、分散型取引所の世界で実現する試みです。

Serum 財団の設立パートナーである Sam はこう言っています: Web3が目指すのはインターネット規模のエコシステムです。Serum は非常に高い目標を持っています。ゴールは全世界の活動の 10% を、Serum と組み合わせて、オンチェーン化することです。それが意味するところは、金融活動の 10%、ソーシャルメディアの 10%、決済の 10%、人口の 10%、資産の 10% など、つまり 10 億人の人々と 10 兆ドルの資産ということです。

以降のセクションでは、Serum が持つ主要な利点(その多くは Solana によって可能となった設計空間に関連する)と、考え得る欠点に焦点を当てて解説していきます。

利点: オーダーブックによる資本効率の向上

“過去はオーダーブック。だからそれは未来だと思う。” — SBF

現在、分散型取引の流動性の多くは自動マーケットメイク (AMM) の形で提供されています。しかし、ほとんどの伝統的金融市場や仮想通貨の CEX では、流動性はオーダーブックを介して提供されます。オーダーブックは AMM よりも設計が効率的で、より少ないスリッページリスクで大きな取引を行うことができます。

AMM / Uniswap — Uniswap は分散型 AMM の最も有名な例でしょう。Uniswap の流動性供給者は、価格に関して「意見を述べる」ことはなく、市場価格で(つまり取引ペアの両方に対して)流動性を提供します。これは変動損失や資本効率の悪さといった問題につながります。

しかし、これまでの歴史が示すとおり、Uniswap はうまく機能しており(V3 ではさらに良くなっています)、一日あたり平均して 10 億ドルの取引量を処理しています。Uniswap と AMM の仕組みは仮想通貨の世界に必要なものですが、その長期的な価値は、初期段階のプロジェクトが流動性を確保するための手助けや、ステーブルコインの取引を促進する点にあると私たちは考えています。オンチェーンのユーザを 10 億人に増やすには、過去の試行錯誤を経て、その規模の流動性を効率的に提供できることが証明されている構造、すなわちオーダーブックが必要なのです。

ピーク時には CEX は 2,000 億ドル、米国株式市場は 5,580 億ドルの出来高があったのに対し、DEX の一日の出来高は最近では 30 億ドルを下回っています。ソース: https://duneanalytics.com/queries/4388/8550

オーダーブック / Serum — 主にオーダーブックによって支えられている米国株式市場の 10 日移動平均の出来高は約 5,580 億ドルであるのに対し、DEX の一日の出来高は 30 億ドル未満です(主に AMM のような仕組みを利用しています)。TradFi(伝統的金融)のような水準の出来高をサポートするために必要な効率性/信頼性/正確性を実現するには、ダイナミックで集中的、そしてリアルタイムに調整可能な流動性を可能にする新しいインフラが必要です。

オーダーブックは、このような改善を可能にします。なぜなら:

  • 受動的な AMM の流動性とは異なり、オーダーブックの流動性は、注文を一定の価格で執行したいという願望を表しており、能動的です。
  • オーダーブックの能動的な性質は、より多くのユーザ(マーケットメイカーなど)にとって魅力的です。
  • オーダーブック上の指値注文の導入により、受動的に両建てすることの副産物である変動損失がなくなります。
  • AMM からオーダーブックに移行することで、市場の流動性は高まり、少ないスリッページで大口の取引が可能になるので、参加者はヘッジによってポジションを積極的にコントロールできるようになります。

AMM は、現在広く利用されている L1 の制限の中でも実現可能な、最も優れた流動性供給方式でした。しかし、高性能な Solana とそれによって生み出された設計空間の登場によって、オーダーブックが、従来の金融市場のような取引規模に対応できる流動性を確保するための重要なプリミティブとして機能するようになりました。

利点: コンポーザビリティによって本格的な金融インフラを備えたプロトコルの構築が可能となる

コンポーザビリティとは、システム設計の原則の一つで、様々なシステムを複数の異なるコンビネーションで組み合わせて連携させられることを意味します。DeFi およびブロックチェーンのエコシステムにおいては、特定のブロックチェーンに構築されたアプリケーションは、同じチェーン上の他のアプリケーションと、あたかも両者が元々リンクしていたかのように統合できるということです。

これとは対照的に、TradFi ではデータサイロやレガシーな IT インフラが邪魔をして、他社のシステムとの(場合によっては同一企業内のシステムですら)コミュニケーションが困難になっています。TradFi システムのコンポーザビリティの欠如は、M&A シナリオに関与する企業間のバラバラのレガシーシステムを統合することに特化した、「変更管理」という収益性の高いコンサルティング分野すら生み出しました。

DeFi のコンポーザビリティがとても強力なのは、すべてのプロトコルが、最初から本格的な金融エコシステムを基盤インフラとして持つことができる点にあります。既に構築されているものを再び作り直して時間を無駄に費やすのではなく、イノベーションとそれぞれのアプリケーションの開発に専念することができます。

Solana L1 を活用した重要な構成要素である Serum は、多くのアプリケーションを Serum オーダーブックによって支えています。

このような観点において、Serum はきわめて重要な基盤インフラ層であり、他のアプリケーションは、Serum の既存のアーキテクチャを利用して開発をスタートすることが可能になります。たとえば、Raydium の AMM は Serum のオーダーブックと直接統合されており、AMM 型の流動性提供とオーダーブック型の深い流動性および低いスリッページを組み合わせた全く新しい取引所モデルを実現しています。貸借マーケットであれば、Serum を借り手と貸し手のマッチングエンジンとして利用し、Serum のオーダーブックを最大限に活用することができます。このような「両方の世界で最高の」ソリューションは、Serum が提供するコンポーザビリティがなければ実現不可能です。

さらに、Solana のシングルチェーンアプローチのおかげで、Serum は、マルチレイヤーやマルチシャードのブロックチェーンで発生するコンポーザビリティの複雑化という潜在的な問題も回避しています。ブロックタイム/コミュニケーション/流動性に関してレイヤー/シャード間で発生する不必要な複雑さや不確実性が存在しないのです。また、マルチシャード/マルチレイヤーアプローチと比較すると、シングルレイヤーでは資本効率も高めることができます。なぜなら、複数のシャード/レイヤーのセキュリティを確保したり流動性を保証したりするための過剰な資本が必要ないからです。Serum は単一のレイヤーに存在するので、開発者に信頼を与え、資本効率を最大化することができます。

将来的には、サイロ化した中央集権的な仕組みでは実現できないアプリケーションが Serum 上に構築されるところを頭に思い描くことができます。

すべての貯蓄口座/投資/住宅ローン/公共料金/保険/個人ローン/クレジットカードといった多様な金融ニーズに一カ所からアクセスしてサービスを受けることができる世界を想像してみてください。さらに、このビジョンを、生活のあらゆる場面にまで広げてみましょう。金融サービスにとどまらず、日常生活に必要なもの — たとえば文書/音楽/データ/パスワード/ポッドキャスト/写真/ビデオなど — これらすべてのアプリケーションやサービスが、完全にパーミッションレスで、暗号化され、分散化された形で、お互いにシームレスに統合されている様子を思い浮かべてください。きわめて強気に考えれば、Serum のインフラがこれらの領域一つ一つで役割を果たすことができ、あるいは本当にそうなるかもしれません。

Serum のコンポーザビリティは可能性を大きく広げ、ビジネスチャンスをすべての金融およびそれ以外の分野にまで効果的に拡大します。プロトコルは、特定のニッチな市場に合わせて製品をカスタマイズし、最高の製品を作り上げることに全力を注ぐことができる一方、舞台裏では Serum が大変な重労働をこなしているというわけです。

利点: Solana のパフォーマンス

Solana ブロックチェーンは、Serum をサポートするために必要なインフラを提供し、その主要なアドバンテージを現実のものにします。Solana はスケーラビリティー(50,000 TPS と秒未満のグローバルステートファイナリティ)、低コスト(平均的なトランザクション手数料は 0.0007 ドル)、コンポーザビリティ(レイヤー 2 やシャーディング無しの高性能)、トップレベルのエコシステムパートナー、そして分散性とセキュリティを兼ね備えています。

高性能な Solana は大衆向けアプリケーションをサポートするための L1 として最適です。

私たちの Solana 投資レポートについてはこちらも参考にしてください:

主な欠点

未成熟 — Serum と Solana のエコシステムは実用レベルで試されてきましたが、まだ初期段階にあります。たとえば Solana は、安定性が最適化されている間は「メインネット ベータ」として運用されています。バグが発見されることもありますが(https://medium.com/solana-labs/mainnet-beta-stall-postmortem-ba0c6064e3)、速やかに修正され、今後の製品をより強く柔軟性に富んだものにしています。Serum は機能性の向上と効率の最適化を目標に、独自のロードマップに沿って開発が進んでいます。

EVM 非互換 — Solana は EVM との互換性がないため、開発者は既存の Solidity のコードを単純にフォークしてくるわけにはいかず、Rust でスマートコントラクトを実装し直す必要があります。現在、仮想通貨の経験を持つ Rust の開発者が不足していることが、EVM 上のプロトコルを Solana に移植する際の主要な障壁となっています。しかし、全体として見れば、Rust 開発者の数は EVM / Solidity 開発者の数よりも遙かに多いので、今後それらの Rust プログラマーが仮想通貨に参入してくれば、長期的にはより大きな人材プールに成長していくでしょう。

さらに、Rust は開発者にパワーとエルゴノミクスの優れた組み合わせを提供するので、通常は、高速化とメモリ安全性、リソース使用量の低減といったメリットをもたらします。加えて、EVM から Rust に移行した開発者は、コントラクトの再定義や再構築に際して、第一原理の考え方を採用せざるを得なくなり、さらなる最適化が図られる可能性もあります。

短期的には Rust の壁が成長の妨げになるかもしれませんが、長期的には Rust 言語が Solana エコシステムの魅力を決定づける一つの要因になると、私たちは信じています。

スピード — Serum は現在 400 ミリ秒の取引速度を持つ最速の DEX の一つであり、将来的には Solana の最適化に伴い、今後数年間でこれを半分以下の 150 ミリ秒にする予定です。パブリックな分散型ブロックチェーンとしては、このスピードは驚異的と言えます。しかし、中央集権型の TradFi における高頻度取引などのアプリケーションと比較すると、Serum / Solana エコシステムは、グローバルに分散化されたノードネットワークであるという物理的な制約により、どうしても速度が遅くなります。したがって、一部の TradFi アプリケーションは中央集権型取引所に残る一方、Serum / Solana は、分散化に魅力を感じ、絶対的な最高速度を必要としない多数のユーザにサービスを提供することになるでしょう。

純粋な速度で言えば Serum は遅延が大きすぎて、一部の機関投資家の TradFi ユースケースをサポートできません。しかし、速度がさほど要求されないアプリケーションや即時決済に近い形で動作するアプリケーションには最適です。さらに、一部の株式やデリバティブ取引(Robinhood タイプのプラットフォーム)も、それほど速度を要求しないことに留意してください。

ロードマップ

Serum は現在ロードマップのフェーズ 3 に入っています。フェーズ 3 では、Serum のエコシステムを活性化しつつ、クロスチェーンブリッジなど、到達可能なマーケットを拡大するために必要なインフラを追加することに重きを置いています。

詳細は https://projectserum.com/#/roadmap をご覧ください。

ガバナンスとチーム

ガバナンスは Serum エコシステムの重要なパーツであり、Serum の将来的な方向性を決定する上で、SRM のステーカーが大きな発言権を持つことができるように、ステークベースのガバナンスモデルを採用しています。

SRM ステーカーはノードを中心に組織されており、これらのノードは手数料/新規マーケット/収益の使い方/買い戻しとバーン/エコシステム助成金などに関する投票権を持っています。議決には、SRM ステーカーの 60% 以上の賛成票が必要です(このパラメータは、提案によって、一定の範囲内で変更することができます)。

最近では、Serum はガバナンス投票プログラムも開始しました。これは、マルチシグによって統治され、自分自身をアップグレードできる、アップグレード可能なプログラムで、Serum のガバナンスをより分散化し、透明性と安全性を高めるための第一歩と考えられます。

詳しくは https://github.com/project-serum/multisigをご覧ください。

Serum ノード一覧。ソース: https://twitter.com/ProjectSerum/status/1312176559185301504

エコシステムの開発

“どのような方向にエコシステムが拡大されていったとしても、最終的には DEX とオーダーブックが土台になります。” — Project Serum (Medium)

高性能な Solana ブロックチェーンは Serum のような優れたプリミティブの構築を可能にする設計空間を開放します。Solana の高性能は正のフィードバックループを発生させ、Solana / Serum エコシステムに大衆向けのアプリケーションが集まるでしょう。

2020 年半ばに Serum に投資した当初、私たちはそのビジョンを信じ、Serum / Solana が活気あるエコシステムの構成要素になるべきだと考えていました。それから 10ヶ月が経過した今、エコシステムが正しい方向に進んでいることを確信しています。

どのような尺度で見ても、Serum / Solana エコシステムは健全で成長しており、新しいユーザ層を魅了していることが証明されています。その例をいくつか挙げてみると:

短期間で Serum / Solana エコシステムは爆発的に拡大しました。すべてのプロジェクトが直接的に Serum に統合するわけではないものの、多くは統合されています。ソース: https://twitter.com/solanians_/status/1402843464841064451

また、Solana のエコシステムを見事に表現する https://pentacle.ai/solana もチェックすることをお勧めします。

エコシステム — Serum に統合されているプロジェクト

ここでは、Serum と統合したり、あるいは Serum をベースにすることで、それまで不可能だったユーザ体験や差別化された製品を実現したプロジェクトを「深掘り」して紹介します。

Bonfida

Bonfida は、Serum 統合の分かりやすく典型的な例でしょう。Bonfida は自らを「フラッグシップ Serum GUI」と説明していますが、それにはちゃんとした理由があります。Serum で取引するための非常に直感的な DEX GUI を提供するだけでなく、Bonfida のダッシュボードには、高度なオンチェーン注文タイプ/専用のマーケット/異なるスキルを持つユーザに対応できる複数の取引モードといった、充実した取引体験のための強力な補完的機能が搭載されています。また、Bonfida は、Bonfida Bots を開発し、ユーザが Serum 上で、TradingView のストラテジやコピートレードなどの自動化された取引戦略を実現できるようにしました。

Serum DEX の GUI は、豊富な補助的機能を備え、カスタマイズされた取引体験を可能にする複数の GUI を提供します。GUI のホストには、DEX 手数料の一部を得られるというインセンティブがあります。その結果、Serum は新しいチャンネルからの流動性を得ることが可能になります。

私たちの Bonfida への投資レポートについてはこちらを参照してください:

Mango Markets

Mango Markets は、トレーダーやマーケットメイカーに優しい分散型取引プラットフォームで、手始めに(Serum のオーダーブック上で)オンチェーンの証拠金取引を提供し、無期限先物の実装も進めています。

Mango Market は最初のうちは Serum のテイカーとメイカーに 5 倍までのクロスマージンレバレッジを提供します。Serum では手数料が SRM の保有量に応じて割引されるティア構造になっているため(訳注: そして Mango プラットフォームが大量の SRM を保有しているので)、Mango のトレーダーは Serum DEX の取引手数料を節約することができます。

分散型ゲーミング — Star Atlas, Aurory, OpenEra, DefiLand など

ブロックチェーンにおいて、ゲームはまだ開拓されていない市場であり、多数のゲーマーのコミュニティはまだ分散化の素晴らしさを体験していません。熱心なゲーマーはゲーム内アイテムを法定通貨で取引する際の厳しいルールや規制をよく知っています。

このようなゲーマーは、購入したアイテムを実際に受け取れるかどうか定かではないサードパーティーのマーケットプレイスでの取引に頼らざるを得ないことがあります。Serum は、ゲーム内通貨やアイテムなどの商品を誰の認可も受けずに売買できるゲーム内マーケットを設置することで、ゲームの分散化を現実のものにするための、最後の欠けていたピースと言えます。また、Serum は、ゲームのユーザに完全にシームレスな体験を提供し、分散化がもたらす利点に加えて、迅速な取引と低い手数料を兼ね備えたパフォーマンスの高いゲーム内経済を実現します。

Oxygen

Oxygen は、担保ベースの貸借に特化した分散型プライムブローカレッジです。貸出プロトコルは、ニッチな仮想通貨トレーダーをコアユーザ層とする DeFi の定番となっていますが、Oxygen は 1 億人以上のユーザを擁する Maps.me との直接統合により、数億人のリテールユーザにスケールアップする戦略を持っています。ユーザは、自分のポートフォリオで利息収入を得たり、既存のポジションに対して現金を借りたりすることができるようになります。性能第一のアプローチで構築された Oxygen は、レバレッジ/空売り/オプション売り/合成金融商品のための一連のプロ向け機能を備えています。

Oxygen は、貸借/利息収入や合成商品の作成などを行うプライムブローカレッジになるというビジョンを達成するため、Serum をその構成要素として利用しています。

私たちの Oxygen への投資レポートはこちらで読むことができます:

Mercurial Finance

Mercurial Finance はダイナミックプールを採用して、低スリッページなステーブルコインのスワップを提供するとともに、様々な戦略を用いて投資収益を最適化することで、流動性提供者の利回りを向上させます。Mercurial は Serum と深く統合され、Serum オーダーブックのフローと流動性を活用することで、スリッページを抑え、両プロトコルにおける取引を促進します。

私たちの Mercurial Finance への投資レポートはこちらです:

PsyOptions

PsyOptions で発行されたオプションは SPL トークンで表現されており、Serum のオーダーブックでオプションを取引するようなコンポーザビリティを可能にします。ユーザは、自分の Dapp 内でオプションを発行して取引することができ、それは Serum のオーダーブックに直接統合されることになります。

Raydium

Raydium は、Solana ブロックチェーン上に構築されたハイブリッドな自動マーケットメイカー (AMM) です。執筆時点では 2 億 7500 万ドル以上の TVL を持ち、Serum のオーダーブックを利用して超高速な取引/流動性の共有/利回りを稼ぐための新機能を実現しています(https://raydium.io/Raydium-Litepaper.pdf)。

Raydium と Serum の間には多くの相乗効果があります。たとえば:

  • Raydium は自分自身の流動性プールの流動性を用いて Serum オーダーブックに注文を出す点がユニークです。Raydium はロックされたトークンを用いて「異なる価格/数量の一連の注文を置いて流動性を提供する」という点において、「純粋な」意味でのマーケットメイカーなのです。
  • Serum に供給された流動性は、Serum のオーダーブックを使用する人なら誰でもアクセスすることができます。実際には、Raydium のユーザが行ったスワップの 50% ほどが Serum オーダーブックで処理され、残りの 50% が Raydium 内部のプールに送られているようです(https://twitter.com/burglol/status/1386218173851004929)。
  • 以前、Serum がフロントエンドのスワップを廃止したことが話題になりましたが、これは Raydium のようなプロジェクトが強力に開発を進めているから可能になったことであり、Serum が健全に発展している証しと言えます。これにより、両プロジェクトはそれぞれ自分の強みに集中することができます。Serum はインフラの改善に、Raydium はユーザに強力で差別化された体験を提供することに焦点を当て、その間にも SRM のバーン量は増加しています。
  • 今後 Raydium が SushiSwap のような最高クラスのプロジェクトと統合していくと、ユーザの体験をさらに高めることができ、それと同時に Serum のオーダーブックの流動性も強化されるでしょう (https://raydium.medium.com/100-days-of-raydium-453863c684f6)。

Serum のエコシステムに貢献してみたいですか? それなら、Serum Docs に掲載されているいくつかのプロジェクトのアイディアをご覧ください:
https://docs.projectserum.com/serum-ecosystem/building-on-our-vision/ideas-for-projects

トークノミクス

Project Serum のエコシステムには Serum ($SRM) と MegaSerum ($MSRM) という二つのトークンがあり、どちらもユーティリティとガバナンスによって価値を生み出します。

$SRM は次のような利用価値を持ちます:

  • Serum の手数料が最大 50% まで割引
  • 毎週実施される買い戻しとバーンの恩恵
  • 「特化した」ガバナンス(将来の手数料など)
  • ステーキング
  • プラットフォーム手数料の支払い

$MSRM は、1,000,000 $SRM と交換することができますが、$SRM 以上の特別な機能と特典があります。MSRM は 1,000 個しか存在しません。具体的には:

  • ノードを稼働させるには 1 $MSRM が必要
  • $MSRM を保有していると手数料が 60% 割引

これ以降では、需要と供給の主な要因を見ながら、トークノミクスをさらに深く掘り下げていきます。

需要面

買い戻しとバーン — $SRM の価値を高めるために重要となるのが買い戻しとバーンのメカニズムで、プラットフォーム手数料の一定割合に相当するトークンが購入され、そしてバーンされます。具体的には手数料の 68% がこの仕組みのために消費されます。詳しい内訳はこちらでご覧ください: https://projectserum.com/#/staking-and-voting

さらに、買い戻しとバーン以外にも、手数料割引/ステーキング/プラットフォーム手数料支払い/ガバナンスといった $SRM の利用価値によって大きな需要が生まれていることが分かります。

執筆時点の SRM バーン状況

供給面

現在 100 億のトークンのうち、約 5000 万がアンロックされて流通しており、2021 年 8 月には最初の大規模なアンロックが行われることになっています。注意していただきたいのは、アンロックされるトークンの大部分がエコシステムとパートナーシップに関連するものであるという点です。

Serum の 7 年間のアンロックスケジュールは保有者の長期的なインセンティブを最大化します。ソース: https://projectserum.com/#/srm-token-summary

需給のダイナミクス

仮想通貨の需要と供給のダイナミクスをモデル化することは大変難しいことで知られています。Coinmonks は買い戻しとバーンが価格へ与える潜在的な影響を評価するためのバイバックフローモデルを考案しました。

注意: 私たちはこのモデルがエコシステムへの価値ある貢献であると考えているので、ここで紹介していますが、私たちはモデルの前提条件(そして前提条件は更新した方がよいでしょう)や価格予測を支持するものではなく、ご自分でよく調査することをお勧めします。

Coinmonks のバイバックフローモデルフレームワーク。ソース: https://medium.com/coinmonks/buyback-flow-model-a-way-to-model-crypto-buybacks-through-the-srm-case-study-cf8ca92a0e2f

Coinmonks のモデルを利用して、トークン当たりの 2027 年の平均算出価格を現在の $SRM の価格 4 ドルと比較すると、CAGR(年平均成長率)は約 49% = ((43.2/4)^(1/6)-1)と推定できます。繰り返しになりますが、この数字は前提条件に大きく依存しています(期間も丸められています)が、バイバックバーンモデルがネイティブトークンの価値発生を促進する強力なメカニズムであることを明確に示しています。

時間の経過とともに、Serum が多数のオンチェーン製品を通じて、10 億人のユーザにとって重要な構成要素になっていくと、フルにアンロックされた後には供給が停滞する一方で、買い戻し圧力が大幅に増加することが予想されます。

まとめ

Serum は野心的な、それも非常に野心的なプロジェクトです。多くの人は Serum を金融の文脈でしか捉えていませんが、私たちは Serum が、総計で何兆ドルもの規模の産業やエコシステムにとって重要なプリミティブであると考えています。オープンな利用、コンポーザビリティ、第一原理設計の利点は、類を見ないほど摩擦を軽減させ、ユーザ体験の向上を可能にします。

Solana 上のトークン化された株式がどんどん増えて、ニューヨーク証券取引所に似たような仕組みが出現するのは時間の問題でしょう。ソーシャルメディアやコンテンツ配信といった重要な柱となるプロジェクトが日々開発されています。

私たちは、すべての根底を DEX とオーダーブックが支えるようになると信じており、Serum のエコシステムの今後の成長を支援できることに興奮しています。

リサーチ担当: @dermotmcg, @ianw888 および @TTx0x

また、リサーチやレビューを支援するために主要なリソースを提供してくれた Serum チームと @SBF に感謝いたします。

免責事項: 本コンテンツは情報提供のみを目的としており、これらの情報やその他の資料を法律/税務/投資/財務/その他のアドバイスと解釈するべきではありません。ここに記載されているいかなる内容も、Sino または第三者のサービス提供者により、本国内またはその他の地域の証券法によって違法となるような有価証券またはその他の金融商品の売買の勧誘/推奨/保証や申し出を意図するものではありません。

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